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2週間まで
1週間
以内
-
死亡届出
-
火葬許可申請書の提出
2週間
以内
-
世帯主の変更
-
医療保険の資格喪失届出
-
公的年金の資格喪失届出
3ヶ月まで
1〜3ヶ月
程度
3ヶ月
以内
-
相続の放棄重要
10ヶ月まで
4ヶ月
以内
-
所得税の申告重要
1〜10ヶ月
程度
-
遺族年金の申請
-
労災保険の申請
-
遺産分割協議書の作成
10ヶ月
以内
-
相続税の申告重要
11ヶ月以降
1年
以内
-
遺留分減殺請求重要
6ヶ月〜1年半
程度
原則
3年
10ヶ月
以内
-
相続税の更正の請求重要
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家族が亡くなったとき、遺族は、社会保険の手続きや、税務上の手続き、葬儀・お墓の管理、遺産の名義変更の手続き、借金の整理など、一度に、様々な事務を負担することになります。
ここでは、弁護士が、事後的な紛争を事前に避けるためにはどうすればいいか、という視点で、各手続きを行うときに注意すること、手続きのメリットやデメリットなどを詳細に解説しております。また、さらに詳細な情報をお探しの方が調査を行いやすいよう、説明にあたっては、事例で説明をしたり、法律の条文を引用するよう心掛けました。
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目次
1亡くなった後に行う手続き
2相続人の調査
3相続の放棄
4遺産の名義変更
5税務申告
6遺産紛争の解決手段
STEP01 | STEP01
亡くなった後に行う手続き
1-1 役所などの必要な届出/手続き
死亡届出の提出の仕方
人が亡くなったときは、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡診断書または死体検案書を添付して、死亡の届出をしなければなりません(戸籍法86条)。
同居の親族が届出人となることが多いですが、同居していない親族、親族ではない同居者や、家主、後見人等も届出人となることができます(同87条)。
死亡の届出の場所は、亡くなった方の本籍地、死亡地、または、届出人の所在地の市町村役場ですることができます(同88条、25条1項)。
死亡届出が受理されると、住民票に死亡年月日が記載されます(住民基本台帳法施行令8条、13条)。
火葬許可申請書の提出の仕方
墓地、埋葬等に関する法律では、ご遺体を葬るために焼くことを「火葬」と定義しています(墓地、埋葬等に関する法律2条2項)。
火葬を行おうとする者は、死亡届出を受理した市町村長から火葬の許可を受けなければなりません(5条1項・2項)。
この火葬許可証がなければ火葬ができませんし、焼骨を墓地に埋蔵したり、納骨堂に収蔵することができません(同14条)。
火葬許可をする市長村長は、死亡届出を受理した市町村長なので、死亡届出を提出するときに、併せて、火葬許可申請書も役所に提出すると良いでしょう。
なお、火葬の後の焼骨を「埋蔵」する場合には、別途「埋葬」許可証は必要ありません。「埋葬」とは、死体を土中に葬ることを意味しており(法2条1項)、焼骨の埋蔵は、「埋葬」ではないからです。
1-2 葬儀費用と香典
葬儀費用とは?
葬儀とは、死者を悼む儀式、これに続く、遺体の火葬、火葬後の焼骨の埋蔵・収蔵等の行為です。
そして、葬儀の方法・形態を決める、葬儀を主宰する人を、慣習上、喪主といいます。
誰が喪主となるべきかについて、法律ではルールがありません。
第1順位の法定相続人である配偶者や子がなることが多いですが、家族関係によっては、それができず、被相続人の両親や、兄妹がなること、内縁配偶者がなることもあります。
葬儀の形式は、その家によってまちまちです。
香典はだれのものか?
葬儀の際には、葬儀費用だけでなく、香典の取り扱いも問題となります。
考え方としては、香典は、遺産に対して支出されるもの、相続人全員に共有として贈与されるもの、葬儀を主宰している喪主へ贈与するものといった考え方があります。
この点、裁判例では、香典は、喪主への贈与と考えられています。
1-3 お墓の管理
はじめに
墓の管理者はどのようにして決まるのでしょうか。
特に取り決めもしないまま、先祖代々の墓を所有し、長男が管理を続けているというケースはよくあると思いますが、もし、親族間で管理を希望する人が複数人あらわれたときに問題となります。
1-4 遺言書の保管場所の確認
自筆証書遺言の捜索
遺言書がみつからないと、被相続人の意図と異なる遺産分割がされることがあります。 まずは、自宅の金庫や重要な書類を収納している場所に遺言書がないか、確認しましょう。 また、自宅以外の場所、例えば貸金庫などに保管していないか確認しましょう。
1-5 戸籍謄本の取り寄せ方
戸籍制度の概要
日本の家族関係を整理するため、市町村は、その区域内に本籍がある夫婦と子を1セットとして、戸籍簿を編成しています(戸籍法6条)。
結婚すると、夫婦で新しい戸籍を作成し、夫婦のいずれかを筆頭者に、もう一方を2番目に、お子さんが生まれたら3番目以降に記載します(同14条)。
戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍で特定します(同9条)。例えば、夫を筆頭者としている場合には、その子は、「夫の戸籍に入っている」と表現します。
1-6 健康保険の葬祭費の申請・遺族年金手続き
・健康保険の仕組み
日本国民は、①企業等に雇われている人が加入する健康保険組合、協会けんぽ(全国健康保険協会)などの被用者保険、②自営業者などが加入する国民健康保険、③75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度のいずれかの医療保険に加入しています。
これを国民皆保険制度(こくみんかいほけんせいど)といいます。
国民皆保険の制度におかげで、日本国民は保険制度を支える保険料を負担するとともに、自己負担分の治療費を支払うことで適切な医療を受けることができるのです。
・遺族年金とは?
故人が受給していた老齢基礎年金の受給権や障害基礎年金の受給権は、死亡によって消滅します(国民年金法29条、35条1号)。
代わりに、遺族は、遺族年金と呼ばれる年金を申請することで、受給することができます。
遺族年金は、世帯の生計の担い手が死亡した場合に、その者によって生計を維持されていた遺族の生活が困難にならないよう、所得補償をする仕組みです。
遺族年金には、国民年金法を根拠にする遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金、厚生年金保険法を根拠とする遺族厚生年金があります。
1-7 労災保険の手続き
労災保険とは?
労災保険とは、「労働者災害補償保険」の略です。
国は、従業員が通勤または業務上の災害によって負傷・疾病・障害・死亡などの被害を受けたときに保険金を給付するために、企業に対して、保険料の納付を義務付けています。
労災保険料は、従業員の給料から負担しているのではなく、企業が負担しています。
民間の生命保険や医療保険は、本人が自分の意思で契約者として保険料を負担していますが、労災保険は、国が加入を強制し、企業に保険料の納付義務を認めた公的な保険です。
1-8 故人の契約の清算
相続の効果:契約は原則承継する
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。
亡くなった方、相続をされる対象者を被相続人(ひそうぞくにん)といいます。財産を相続する人を相続人(そうぞくにん)といいます。
一切の権利義務とは、売主・買主などの契約上の地位や、借金も含みます。
承継するとは、ひきつぐということです。
相続人は、原則として、一切の権利義務を承継するので、これを包括承継の原則ということもあります。
包括承継の例としては、例えば、自動車を購入する契約をしたのに名義を変更しないまま死亡した場合、相続人は、自動車の買主としての地位を相続するので、代金を払わないといけないし、また、自動車の名義を変更してもらう権利があります。包括承継の原則には、いくつか例外があります。例えば、被相続人がした生前の契約に、「自分が死んだときは、相続人に契約が引き継がれません」という内容を合意していれば、契約が相続人に引き継がれることはありません。
当たり前の話をしているようですが、そういう取り決めをしていないと、原則として相続人に権利義務が移るという厳しいルールともいえます。
1-9 免許証の返却
免許証の返納義務
免許証の権利関係については道路交通法に規定があります。
道路交通法105条は、「免許は、免許を受けた者が免許証の更新を受けなかったときは、その効力を失う」と規定し、免許が失効することを定めています。そして、同107条は、免許が失効したときは、すみやかに、免許証を返納しなければならないと規定しています。
免許の保有者が死亡した場合には、その後、免許証の更新を受けることが不可能となりますので、法律には明文で規定されていませんが、有効期限の経過を待たず、死亡によって当然に免許証が失効すると解釈されています。
したがって、免許証の保有者が死亡した場合には、すみやかに、警察署に免許証の返納を行う必要があります。
STEP02 | STEP02
相続人の調査
2-1 相続人の順位
相続人とは?
故人の遺産を「包括的に承継する」ことができる人を「相続人」といいます。
包括的に承継するとは、プラスの財産だけではなく、借金も含めて引き継ぐことを意味しています。分かりやすい言い方をすると、預金等を解約するときに、印鑑が必要な人が相続人です。
反対に、相続をされる方、つまり、亡くなった方を、「被相続人」(ひそうぞくにん)といいます。
相続人の順位とは?
・民法の定め
相続人の順位は、民法887条から890条にかけて、規定されています。誰が相続人になるかは、事例によって、何通りもありますので、基本となる条文から考えるのが適切です。まずは条文を紹介し、順番に解説します。
2-2 相続人の相続分
遺産の分け方の全体像・遺産分割協議書の作成
遺産をどう分けるかを決めるにあたって、まず、だれが遺産分割の当事者になるか確認する必要があります。
遺産分割の当事者は、戸籍の記載と民法の規定によって定まります。
遺産分割の当事者(相続人)が確定したら、相続人のそれぞれが、遺産に対する持分をどれだけ持っているか確認する必要があります。
相続人の持分は、法律で定められている「法定相続分」という割合を基本として、これに個別事情を加味して定める「具体的相続分」によって確定します。
具体的相続分が決まったら、その範囲内で、どの遺産を選択するか相続人全員で協議します。
遺産分割協議が済んだら、だれが何を取得するか取り決めた文書(遺産分割協議書)を作成し、これを金融機関や法務局に提出して、遺産の名義変更や現金の分配を行います。
これが遺産分けの全体の流れです。
基本となる法定相続分の理解
法定相続分とは、相続人が取得することができる相続財産の総額に対する分数的割合をいいます(民法900条)。
この割合は、被相続人が遺言書で事前に修正することもできますが、特に、指定しなかった場合の割合については民法900条に定められています。
STEP03 | STEP03
相続の放棄
3-1 相続放棄のメリット・デメリット
相続の放棄の定義と効果
相続人は、被相続人の死亡時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するのが原則です(民法896条)。
しかし、民法には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で相続の放棄の申述をすれば、はじめから相続人とならなかったものとみなすと規定されています(915条、939条)。
具体的には、家庭裁判所に相続の放棄の申述を行い、これが受理されれば、相続が開始したときにさかのぼって、一切の権利義務が生じなかったことになります。
なお、相続の放棄をする前に、被相続人の遺産を原資にして借金を払ったり、遺産を処分したり、遺産を費消してしまうなどの相続の放棄と矛盾する行動をとってしまうと、原則として、相続の放棄が受理されなくなってしまうので、注意が必要です(民法921条1号)。
相続の放棄のメリットとデメリット
相続の放棄のメリットは、借金などのマイナスの財産を引き継がなくてよくなるということです。
一切の財産的な権利関係を放棄できるため、連帯保証人の地位も引き継がなくてよくなります。
相続の放棄のデメリットは、プラスの財産も含めて、手をつけてはいけなくなることです。
相続の放棄をすると、相続権は、他の相続人に移り、遺産は他の相続人のものになります。故人の持ち家に住んでいる場合には、相続の放棄をすると、自宅も含めて失うことになります。
STEP04 | STEP04
遺産の名義変更
4-1 遺産の捜索と名義変更
遺産の名義変更の共通点
・遺産が放置される背景
相続が発生した場合、遺産の種類が預金や現金だけなら、名義変更は比較的容易です。預金なら解約して、現金ならそのまま分配して、手続が終わりますので、放置されることは少ないです。
しかし、不動産、保険、株式、投資信託などの遺産があり、それらの名義変更が必要となる場合、ほとんどの場合、遺産分割協議書または各金融機関所定の合意書に、相続人全員が署名し、かつ、実印を押印し、印鑑証明書を添付しなければなりません。
実は皆さんが思われている以上に、名義を変更できないまま、いわば使えない財産となっている遺産はきわめて多いのです。
名義変更ができなければ、被相続人が相続人のために残した遺産の趣旨に反しますし、いつまでも相続争いを次世代に引きつぐことになってしまいます。
預貯金ですら、相続人全員の印鑑がそろわず、放置されていることもあります。
不動産の探し方・名義変更
・不動産の探し方
不動産が所在する市町村は、固定資産税を課税するため、固定資産課税台帳を作成しています。
同一の所有者に帰属している不動産を一覧表にしたものを名寄帳(なよせちょう)といい、相続人は、地方税法387条、382条の2第1項の規定に基づいて、名寄帳の写しの交付を受けることができます。
この一覧表によって、およその不動産を把握することができます。
・不動産の名義の確認
固定資産税の納税者と不動産の名義人(登記)は、必ずしも一致していません。
名寄帳に記載があっても、先代の名義のままになっていたり、他の相続人が固定資産税を納税しているため、故人に持分はあっても、名寄帳に載っていないことがあります。
不動産が誰の名義になっているかを確認するには、法務局で、不動産登記事項証明書を取得する必要があります。
皆さま、法律事務所に権利証をお持ちになることが多いのですが、権利証では現在の名義が誰になっているか分かりません。権利証は、権利を取得したときに交付されるもので、その後の不動産の名義の変更は記載されないからです。
4-2 遺言書があるときの手続き
そもそも遺言書は何の役に立つのか?
・法定相続分を変更する効果
本来、相続人は、遺産を、法律で定められた「法定相続分割合」によって分配することになります。
例えば、相続人が子供3人のケースでは、それぞれ3分の1が法定相続分です。
しかし、遺産の分配について、遺産を残した故人が分配の割合を指定するのであれば、故人の指定が優先します。
遺言書によって定められた相続人の相続割合を「指定相続分」といいます。
遺言書は、通常、指定相続分を定め、法定相続分を変更するために、作成されます。つまり、法定相続分と異なる割合で相続させたいときに、遺言書は作成されるのです。
・名義変更を簡略化する効果も
例えば、不動産を相続人の1人に相続させるという遺言書を作成しておけば、その相続人は、遺産分割協議書を作ることなく、1人で名義変更をすることができます。このように、遺言書できちんと、取得者を定めておくと、名義変更手続を簡略化することができます。
あなたが相続人の1人で、遺言書で遺産を多く受け取った場合の預金の名義変更
・遺言書に遺言執行者の定めがない場合
遺言書によって、特定の遺産を相続させると指定された相続人は、検認手続を経た遺言書の原本を持参し、金融機関に払い戻しを請求することになります。
遺言書の記載から、あなたが当該遺産を取得することが明確であれば、他の相続人の同意がなくても、払い戻しをすることができる場合もありますが、通常、金融機関は、のちの他の相続人とのトラブルを避けるため、あなたに、他の相続人の印鑑も求めてくる、もしくは、「遺言執行者」の選任を求めてくることがあります。
遺言執行者とは、相続人全員の代表として、遺言書の内容を実現する執行人のことで、家庭裁判所が選任をしてくれます。
遺言執行者の選任するためには、あなたが家庭裁判所に遺言執行者を選任するよう申込みをしないといけません。裁判所から選任された遺言執行者からの払戻請求を行えば、金融機関は応じます。
・遺言書で遺言執行者を定めていた場合
あらかじめ、遺言書で遺言執行者を特定の人に指定しておけば、家庭裁判所の選任手続をしないで、その遺言執行者が金融機関で払い戻し手続をすることができます。遺言書で、あなたが遺産を相続すること、及び、あなたが遺言執行者になることの両方を決めておけば、他の相続人の協力がなくとも、あなた1人で、預金の解約手続が完結します。
遺言書の内容によっては、簡単に払い戻しができないこともありますので、揉めそうであれば早期に遺言執行者の選任を申し立てることが良いでしょう。また、遺言書で遺言執行者の指定をまだしていない場合には、遺言執行者の指定の遺言書を作成すると良いでしょう。
STEP05 | STEP05
税務申告
5-1 所得税と相続税
所得税の申告の必要性と期限
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。通常、所得税の申告期限は、3月15日です。
しかし、所得者が死亡した場合には、3月15日ではなく、相続の開始があったことを 知った日の翌日から起算して4か月を経過した日の前日(例えば、死亡した日が5月20日であるときは、9月20日)までに、相続発生年の故人の所得を申告する必要があります。
これを所得税の準確定申告といいます。
相続税の申告の必要性と期限
所得税は、故人の生前の利益について課税されるのに対して、相続税は、故人から相続人への財産の承継に対して課税される税金です。
被相続人から相続、遺贈、相続時精算課税に係る贈与等によって財産を取得した各人の課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合、その財産を取得した人は、相続税の申告をする必要があります(相続税法16条)。
遺産分割協議が成立していない場合の対応
相続税は、遺産全体に対する相続税額を、実際に取得した遺産の額に応じて按分して納付するのが原則ですが(相続税法17条)、申告期限である10か月のうちに、すべての遺産分割協議を終えることは必ずしも容易ではありません。
そこで、分割が未了の場合には、仮に、法定相続分に従って取得したと仮定した場合の相続税額を納付し、遺産分割が済んだ時点から4カ月以内に、実際の取得金額に応じて、修正申告又は更正の請求をすることになります(相続税法55条、32条1項1号)。
STEP06 | STEP06
遺産紛争の解決手段
6-1 遺産分割調停
遺産分割調停の概要
遺産分割の調停とは、家庭裁判所を介在して、当事者で遺産分割の合意による解決する制度です。
遺産分割の審判とは、家庭裁判所が、遺産の分割について、終局的な判断をする裁判のことです。
調停は話合いの手続で、審判は遺産分割の分け方を裁判所に決めてもらう手続です。
遺産分割調停の手続の流れ
・費用はいくらかかるでしょうか。
遺産分割調停を申し立てる際に、裁判所に納める費用としては、印紙1,200円と郵便切手です。弁護士を代理人に立てるときは弁護士費用が発生します。
遺産分割調停・審判のポイント
遺産分割調停は、①戸籍からわかる相続人同士が話し合い、②現存する遺産を、③どのように分けるか、協議する場です。
調停が成立しない場合には、審判に移行しますが、審判で決まるのは、上記③だけです。
他人名義の預金を分けるには? 前提問題の具体例
亡くなった方が相続税対策等の理由で、親族名義で預貯金を蓄えていた場合、相続開始後、その親族名義の預貯金はどうなるのでしょうか。遺産分割の前提問題としてよく争点となるのが他人名義の預金です。
遺産分割を弁護士に依頼するメリット
このように、遺産で揉めている場合には、何で揉めているのかによって、選択すべき裁判所が、家庭裁判所なのか、地方裁判所なのか変わってきます。そのことを認識しないまま進めていても、無駄な時間を使うだけです。
遺産分割の前提問題や付随問題も、調停では話し合うことはできますが、調停はあくまで話合いだけで、結局話合いができない場合には、民事裁判を提起するしかない場合もあります
6-2 遺留分減殺請求
遺留分とは?
遺言書によって、遺産を取得できないことになった相続人は、遺言書で多く取得しすぎた受遺者・相続人から一定限度、取り返すことができます。
また、遺言書がなくても、遺産のほとんどを生前に自分以外の者に贈与されて、遺産からの取り分が少ない相続人は、多く取得しすぎた受贈者から一定限度、取り返すことができます。
このように、相続人が、最低限度、遺産を取り返すことができる権利を遺留分といいます。
存在する遺産を話合いで分けることを遺産分割協議といい、すでに他人が取得した遺産の一部を取り返すことを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)をすると表現します。
遺言書や生前贈与によって、遺留分に達しない遺産しか受け取れなくなってしまった状態を、「遺留分が侵害されている」と表現します。
なお、遺留分という権利を行使するかしないかは、それぞれの相続人の自由です。遺産がいらないときには、遺留分は主張しないという選択をすることになります。
遺留分の計算方法
・計算の概要
まず、いくら取り返せることができるのかを検討するにあたって、遺産から自分に最低限確保されるべき金額(遺留分額)が、いくらあるのか計算する必要があります。
遺留分額が決まったら、現実に受け取った遺産との不足分(遺留分侵害額)を確定し、これを相続人や受遺者に返還請求していくことになります。
遺留分を事例で解説
・事例①
太郎さんの相続人は、子供の一郎君と次郎君の2人です。
太郎さんは生前に一郎君と次郎君に、それぞれ1000万円を贈与しており、さらに、残っていた遺産2000万円をすべて、一郎君に相続させるという遺言書を残して死亡しました。次郎君はいくら取り返すことができるのでしょうか。
遺留分減殺請求の期限と方法
・遺留分減殺請求の期限
遺留分を主張して、遺留分額に不足する金額の返還を求めることを遺留分減殺請求といいます。
この請求は、死亡の事実および減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知った時から1年で時効により消滅します。
また、死亡日から10年を経過すれば、遺言書の存在を知らなくても、請求できなくなります(民法1042条)。
6-3 人事訴訟
戸籍制度と相続手続きの関係
戸籍の記載は、事実上真実と推定されます(最一小判昭28.4.23民集7巻4号396頁)。
したがって、戸籍に名前がなければ、その者の署名押印がなくても相続手続きはできますが、戸籍に名前があれば、相続手続きにおいてその者の署名押印も必要となります。
戸籍の訂正の方法
戸籍法には、いくつか戸籍を訂正する方法が列挙されています。
不適法な記載等の訂正(法113条)、無効な行為の記載の訂正(法114条、判決による戸籍の訂正(法116条)です。
戸籍法113条や戸籍法114条は、争いはありますが、一般的に、戸籍の記載が不適用なことを明らかであり、関係者に争いがなく、また、相続人の範囲などの重要事項に関わらないものを対象としたものと考えられております。
したがって、相続人の範囲を争うようなケースにおいては、戸籍法116条による判決による訂正が必要です。判決による訂正とは、つまり、裁判によって親族関係を戦わなければならないということです。
6-4 葬儀費用に関する民事訴訟
葬儀費用が訴訟で争われる場合とは?
葬儀費用は、死後に発生した支払ですので、「遺産」、つまり、「被相続人の債務」には含まれません。
そのため、相続人間で葬儀費用の負担について遺産分割調停においても、協議が成立しない場合には、民事訴訟によって解決を図ることになります。
6-5 使途不明金に関する民事訴訟
使途不明金とは
被相続人の同居者が、被相続人の預金を、死亡前後に引き落とすことは実務上多々認められます。
引き落としの使途としては、
①死亡すると預貯金が凍結するため、死後事務のために管理しやすいように生前に引き落としておく、
②被相続人に贈与すると言われ自分のために引き出す、
③被相続人のために使用するために、被相続人の代わりに引き出す、
④着服目的で引き出す
などです。
しかし、どの使途なのか分からない引き出されたお金は、使途不明金となり、紛争の引き金になります。
使途不明金を解決する訴訟手段
遺産分割調停・審判においては、分割時に、存在が分かっている財産を分けることしかできず、相続人の誰かが隠匿しているかどうかまで踏み込んだ判断はされません。
具体的には、地方裁判所に不当利得返還訴訟を提起し、相手方が被相続人の意思に反して引き出したことを明らかにする必要があります。