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長期化する遺産分割事件。遺産分割の期限を弁護士が解説

相続・税金の手続き 遺産分割 2017.08.27

遺産分割とは、遺産の分け方を決めることです。このサイトでは、遺産を相続することを前提に、いつまでに、相続人間で分け方を決めないといけないのか、遺産分割の期限を解説します。

なお、相続を承認して遺産分割協議をするのではなく、相続を放棄する、または、遺産がもらえず遺留分を主張するなどの期限は、法律できちんと期限が規定されていますので、そちらの記事をご参照ください。

相続の放棄の期限の記事はこちら
遺留分減殺請求の期限の記事はこちら

 

民法上の権利消滅のリスク

民法上は、いつまでに遺産分割協議を終わらせないといけない、とった遺産分割協議の期限のルールはありません。しかし、長期間放置したことの結果として、次のようなリスクがあります。

 1 債権の消滅時効

しかし、例えば、預貯金や有価証券などの債権は、10年間行使しなければ消滅時効によりに消滅することがあります。これは、金融機関が争ってくれば問題になりますが、実務上、金融機関が時効を主張することは、正当な理由がなければ、権利の濫用として許されないことになっています。金融機関が時効を主張してくるのは、ほとんどないと思って良いでしょう。一方で、個人に貸した債権などは消滅することが多いです。

 2 第三者による取得時効

また、不動産を放置していると、例えば、第三者が勝手に占拠している場合には、取得時効という制度によって、他人に権利を奪われることがあります。

 3 債権者による差押え

さらには、共同相続人の1人に、借金があると、親の代から名義を変えていない不動産などについても、法定相続分に相当する持分は、債務者の財産とみられて、差押えがされ、持分を第三者が取得するということがあり得ます。

 4 紛失

最後に、一番重要な問題は遺産の紛失です。時間が経ち、遺産であったはずの現金がなくなったとしても、どこにいったか分からなければ文句も言えません。無くなった遺産は分けることができません。

このように、遺産分割協議書を作ること自体には民法上、期限はありませんが、放置することによって、権利が消滅したり、遺産が分けられなくなるリスクはゼロではありません。

 

税務上のリスク

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。

10か月たった時点で、遺産分割が済んでいなくとも、相続税の申告期限が延びることはありません。そのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人が民法に規定する相続分に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。

申告の際、遺産分割が済んでいないと、相続税の特例である配偶者の税額の軽減の特例や、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例などが適用できない申告になりますので注意が必要です。上記特例がないもとして申告し、その後、実際に遺産分割協議が済んでから4カ月以内に、実際の取得金額に応じて、特例を適用し、修正申告又は更正の請求をすることになります。

この特例の適用ができるのは、やむを得ない事情がなければ原則として、申告期限から3年以内に分割があった場合に限られます。

つまり、相続開始から3年10か月以内に遺産分割協議が成立しないと、やむを得ない事情がなければ原則として、減税措置を適用できなくなるので、注意が必要です(相続税法19条の2第2項、租税特別措置法69条の4第4項、相続税法施行令4条の2)。

そのため、税務上は、相続開始時から3年10カ月を一つの目安として、遺産分割協議が終了するよう、進めていくのがよいでしょう。もちろん、10カ月の申告期限内に終了することが一番です。

 

無理と思ったら速やかに調停を。

このように、遺産分割を放置していても良いことはありません。遺産分割調停は、家庭裁判所での話合いですので、何も恐れることはありません。手続の流れは、離婚事件に例えると、養育費の調停や財産分与の調停と同じです。あくまで、当事者間で終わらない話合いを家庭裁判所で行うだけです。弁護士も必須ではありません。裁判は非公開ですので、恥ずかしくもありません。

もめたまま時間が経つより、誰かが行動をした方が良いと思います。当事者同士で話合いが無理だと思ったら、調停を考えましょう。

 

(参考)遺産分割が終わっているのかどうかも分からないという方へ

ここまで、遺産分割の期限について説明してきましたが、中には、知らないうちに遺産分割が終わっていた、または、終わっているのか分からないというケースもあります。

多くの場合、相続人の誰かが中心となって、手続を進めていきます。

あまり遺産に関心がなく、言われるがままに署名押印をされている場合、遺産分割がどうなっているのか分からないこともあります。

こういう状況を放置していると、例えば、子の世代になってから、祖父の家の名義が変わっていないことがわかり、全員に、解体の義務が発生するなどの事態があります。

それでは、遺産分割が終わっているのかどうかは、何を基準に判断すればいいのでしょうか。

回答としては、遺産の名義が変わっているかどうかが、重要な判断要素となります。

遺産分割協議は、何のために行うかと言えば、それは遺産の名義変更のためです。

逆に言えば、遺産の名義変更ができていない間は、何らかの原因で、遺産分割協議が完了していないことが多いです。

遺産の名義変更が出来ているかは、不動産であれば法務局に、預貯金であれば各金融機関に、被相続人名義の遺産があるかを確認することで分かります。今も、被相続人の名義で遺産があるということは、名義変更が終わっていないと考えられます。もちろん、単に名義変更が漏れていたという場合もありますが、通常は、遺産分割協議が成立すると、名義変更まで進めます。

「サインも判子も押したから安心」ではなく、最後の名義変更までできているか、しっかりと確認しましょう。