非嫡出子が遺産をきちんと相続する方法は?生前と死後の対策を弁護士が解説
1 非嫡出子とは?
婚姻関係にない男女から生まれた子は、父親による認知によって父の子となりますが(民法779条)、婚姻関係にない男女から生まれた子なので、民法上は、「嫡出でない子」と表現されています。
嫡出でない子は、非嫡出子や婚外子とも呼ばれます。
一方、婚姻関係にある男女から生まれた子を嫡出子と言います。
2 嫡出子と非嫡出子の民法上の権利の違い
昔は、民法で相続分に差が設けられていましたが、最高裁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件:平成25年9月4日)が憲法違反と判断したことによって、相続分の差を認めた民法の法律(平成25年12月11日法律第94号)が変更されました。最高裁の決定はこちらをご覧ください。
新法が適用されるのは,平成25年9月5日以後に死亡した事案です。もっとも,平成25年9月4日の最高裁判所の違憲決定があることから,まだ遺産分割が終了していない場合には,嫡出子と嫡出でない子の相続分が同等のものとして扱われます。
したがって、現在は、非嫡出子だからといって、嫡出子との間で、民事上の権利の差はありません。
法律の改正前と後での条文の新旧比較表は、新日本法規出版株式会社のHPが大変見やすいのですで、ご覧ください。
なお、あえて、法令上の非嫡出子の特別な取扱いを紹介するとすれば、非嫡出子は、夫の名字(氏)になれないということです。
民法の規定(子の氏)
第790条
1 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2 嫡出でない子は、母の氏を称する。
3 非嫡出子の戸籍の記載
民事上の権利の差はありませんが、非嫡出子は、父親の名字にはなれませんので、母親の戸籍に入ります。母親の戸籍に入った上で、父親が認知していれば、父親の名前が記載されます。父親が認知していなければ、父親の名前が空欄となります。
4 非嫡出子の法定相続分
親の相続について、非嫡出子(婚外子)と嫡出子で、法定相続分に差はありません。
(1)嫡出子が1人、非嫡出子が1人のケース
たとえば、相続人が、婚外子1人と嫡出子1人の合計2人であれば、相続分は2分の1ずつ、つまり、半分です。
(2)嫡出子が2人、非嫡出子が1人のケース
嫡出子が2人いれば、合計3人になるので、子の相続分は3分の1ずつです。
相続分の詳しい記事はこちらをご覧ください。
5 非嫡出子が相続で遺産を受け取る方法
(1)認知されている場合
父親に認知されていれば、父親の戸籍上に、認知をした事実が記載されます。あくまで、非嫡出子が属しているのは母親の戸籍ですが、認知をした事実は、父親の戸籍にも記載されます。
そのため、父親の相続について、銀行や法務局で相続手続きをする場合には、非嫡出子が存在し、相続人の1人であることが、分かってしまうので、非嫡出子の実印と印鑑証明書なしには、遺産の名義変更はできないことになります。
したがって、父親に遺産がある場合で、かつ、認知がされている場合には、他の相続人から連絡があることが多いでしょう。
(2)認知されていなかった場合
父親が生前に認知をしていなかった場合には、相続手続きは少し複雑になります。
父親の戸籍に認知の事実が記載されていないため、非嫡出子(婚外子)の存在がばれないまま、遺産の名義変更が完了してしまいます。
この場合の救済規定として、「相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権」という制度があります。
民法の規定(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第910条 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
この制度は、他の共同相続人に金銭での弁償を求める制度です。前提として、父親の死後に検察官を相手にして認知の訴えを提起する必要があります。
6 相続対策(生前贈与・遺言書)をされていた場合の対応方法
ここまで説明してきたのは遺産が存在する場合の話です。
たとえば、生前贈与や遺言書などで、非嫡出子(婚外子)に遺産がいかないような生前対策をとられていた場合にはどう対応すればいいでしょうか?
大きく分けると2つのアプローチがあります。
- 生前から父親と交渉する。
- 死後に遺留分侵害額請求をしていく。
父親との生前の交渉は、一見、難しいと思われるかもしれませんが、父親としても死後に、嫡出子と非嫡出子がもめることは望まないはずです。そのため、死後に揉めないよう、むしろ、非嫡出子が父との間で、推定相続人らが平等な取り分となるような死因贈与契約や生前贈与契約を締結するよう交渉してみましょう。
もう1つは、遺留分侵害額請求をするという方法です。ただし、遺留分侵害額請求によって守られる範囲には限りがあり、古い生前贈与が対象外となっています。つまり、計画的な長期の生前贈与によって、相続対策をされていた場合に、対抗できないことがあります。このようなデメリットがあるので、やはり、まずは、生前から交渉をしていくべきです。
遺留分侵害額請求の記事はこちらをご覧ください。
7 20歳未満であれば相続開始前から養育費も請求しておく
(1)養育費を請求する権利がある
成人年齢が18歳となりましたが、現状ですと20歳までは養育費を請求できますし、父親の収入や家庭環境、異母きょうだいの学歴によっては、大学卒業までの学費の負担を求めることも可能です。
過去に遡って請求することができないので、0歳からきちんと請求しましょう。
(2)相手からの慰謝料請求にも負けない
なお、非嫡出子の養育費を請求するにあたって、反対に、慰謝料を請求されるのではというご不安もあるかもしれません。しかし、それでも養育費を請求するべきと考えます。
そもそも、非嫡出子をもうけたからといって、親が必ず慰謝料などの法的責任を負うものとは限りませんし、仮に、相手の配偶者に対して法的責任を負うとしても、その責任は、非嫡出子を生んだ母親だけではなく、父親にもありますので、母親の責任は2分の1以下となります。不貞慰謝料が合計100万としても、母が負担する額は、100万円の半分の50万円ですので、20年間の養育費に比べてたら、少ないものです。
8 非嫡出子の相続・養育費の相談は弁護士へ
非嫡出子も、嫡出子と平等に扶養や相続を受ける権利があります。ただ、疎遠であることや、他の嫡出子と関係が良好ではないことが多いので、弁護士にご相談ください。
弁護士は、非嫡出子の代理人として、父親や、異母兄弟らと交渉をすることができます。
遺産相続をサポートする専門家としては、税理士・弁護士・司法書士などが挙げられます。
この中で、相続人同士や第三者との交渉が必要な相続事件の解決は、弁護士が専門です。
そして、以下のようなケースでは、弁護士に依頼することで、相続問題を解決できる場合があります。
- 交通事故や労災事故で死亡したので損害賠償請求をしたい。
- 相続人と連絡がつかない
- 遺産として何があるかが分からない
- 遺言書の内容に納得ができない
- 生前に多くの贈与がされており残った遺産だけでは平等ではない
- 不動産の分け方がきまらない
- 株式の分け方がきまらない
- 会社が保険料を払っていた生命保険があるけれど会社と話がすすまない
- 供養の費用でもめている
- 調停や裁判の代理をしてほしい
- 相続の放棄をしたい
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