相続人の住所の調べ方は?連絡をしたいのに連絡が取れない場合の対応方法を解説。
このページでは、相続人に相続の事実を伝えて、相続手続きに協力してほしいのに、相続人がどこにいるか分からない、というお悩みについての対応方法を解説しています。
反対に、自分も相続の話合いに参加したいのに無視されている場合の対応方法についての解説はこちらをご覧ください。
1 相続人の住所が分からないと話合いも調停もできない。
相続が発生した場合には、預金や不動産などの名義変更をするには、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
裁判所の調停であれば、名義変更のための実印や印鑑証明書はいらなくなります。しかし、まず、調停をするにしても、裁判所は相続人の住所を調べてくれませんので、調停を申し込む相続人が、他の相続人の住所を調べないといけません。
このように、相続人の住所が分からないという問題は、遺産相続を解決する上で、最初にぶつかるハードルです。
本記事では、電話などで一切連絡がとれずに住所が分からない場合の調べ方を解説します。
2 相続人の住んでいる場所は分かる場合
住んでいる家自体は分かるけど、番地が分からないというケースもあります。この場合は、インターネットのグーグルマップなどのサービスで、その家の場所を調べれば、およその番地が分かります。番地が分かったら、実際にお手紙を送って、連絡がつかないか、確かめてみましょう。
3 住んでいる場所も番地も分からない場合
(1)戸籍謄本と戸籍の附票の写しの取得
一般的には、戸籍謄本と戸籍の附票の写しという公文書を取得することで、市役所が把握している住所が分かります。
そのため、戸籍謄本と戸籍の附票の写しを取得しいていきます。
(2)戸籍謄本を取得する方法
なぜ、戸籍謄本から調べる必要があるか。
戸籍謄本には、現在の住所は記載されていません(戸籍法13条)。
現在の住所が記載されているのは、戸籍の附票の写しです(住民基本台帳法17条3号)
それでは、最初から、戸籍の附票の写しを取得すればいいかと思われますが、戸籍の附票は、戸籍を単位として作成されているため、戸籍の附票の写しを取得するには、住所を調べたい相続人の本籍地情報が必要です(住民基本台帳法16条)。
したがって、まず、一段階目として、戸籍謄本を取得して、本籍地を確認する必要があります。
法律の定め方
戸籍謄本については、戸籍法という法律で、その取得方法が決まっています。まず、法律の条文を紹介します。
第10条
1 戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
第10条の2
1 前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
① 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
② 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合
戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
③ 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合
戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
直系は取得が容易であるが、傍系はやや難しい
戸籍法10条では、自分の直系尊属の戸籍謄本は、特別な条件がなくても、取得できるように規定されています。そのため、自分の祖父母や父母の戸籍は、取得は容易です。
難しいのは、戸籍法10条の2という条文に記載された、いわゆる第三者請求の要件です。叔父や叔母や兄弟は、直系ではなく傍系となりますので、戸籍法10条という基本形の条文では取得することができません。そのため、これらの傍系の存続の戸籍謄本第三者請求の要件を満たした場合のみ、取得ができます。
第三者請求が認められる具体例としては、法務省のホームページに以下のQandAが記載されておりましたので、紹介します。個別の手続きは、各市役所ごとに差があることが多いので、各市役所にご確認ください。
Q9 第三者が戸籍謄本を請求することができる場合とは、具体的にはどのような場合をいうのでしょうか。
A 自分の権利を行使したり、自分の義務を履行したりするために戸籍の記載事項を確認する必要があるような場合や、国等に提出する必要があるような場合等をいいます。
具体的な例としては、「(1)提出先は○○家庭裁判所であり、(2)請求者(甲)は、平成○年○月○日に死亡した弟乙の相続人(兄)であるが、乙の遺産についての遺産分割調停の申立てに際して添付資料として乙が記載されている戸籍謄本を提出する必要がある」というような場合です。
実際には、このように口や文字で説明するだけでは足りず、自分の戸籍や被相続人の除籍なども提出して、自分も共同相続人の1人であることを示す必要があるので、手続がやや難しいです。しかし、制度としては可能ですので、遺産相続が発生して、住所が分からないときは、是非ためしてみてください。
(3)戸籍の附票の写しを取得する方法
相手の本籍地が分かったら、次に、戸籍の附票の写しを申請します。
法律の定め方
戸籍の附票の写しの取得手続きについては、住民基本台帳法という法律で規定されています。
(戸籍の附票の写しの交付)
第20条
1 市町村が備える戸籍の附票に記録されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、当該市町村の市町村長に対し、これらの者に係る戸籍の附票の写しの交付を請求することができる。
3 市町村長は、前2項の規定によるもののほか、当該市町村が備える戸籍の附票について、次に掲げる者から、戸籍の附票の写しで第17条第2号から第6号までに掲げる事項のみが表示されたものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該戸籍の附票の写しを交付することができる。
① 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の附票の記載事項を確認する必要がある者
② 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
③ 前二号に掲げる者のほか、戸籍の附票の記載事項を利用する正当な理由がある者
戸籍謄本と同じように戸籍の附票の写しの「第三者請求」においても、「正当な理由」が要件となっています。
戸籍謄本を取得したときと同じように、相続が発生していることが分かる被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、自分も共同相続人の1人であることが分かる戸籍謄本を説明資料としてつけて、同じく共同相続人である相手方の住所が記載された戸籍の附票の写しを取得する必要があることを窓口担当者に示しましょう。
4 弁護士に依頼した場合の流れ
弁護士には、職務上請求という制度があり、相続人に代わって、戸籍謄本や戸籍の附票を調べることができます。
第三者請求をご本人でされている方は少ないように感じます。弁護士事務所に、相談にこられた際に、傍系の血族の戸籍などを完璧に集められている方はごく少数です。
相続人調査でお困りの場合には、是非、弁護士にご相談ください。
相続を弁護士に依頼するメリットはこちらの記事をご覧ください。
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