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役員の会社に対する貸付金(役員借入金)を相続したら?会社との交渉方法を解説

会社支配権紛争・株式の相続 遺産の分け方(遺産分割) 2022.07.23

1 貸付金は相続される

貸付金は、相続によって、法定相続分にしたがって、相続人に承継されます。

預貯金などの遺産については、相続人の間で、協議をしないと、解約はできませんが、貸付金などの債権は、相続人間での話合いによらず、法定相続分で分割されます。

つまり、会社の経営者が亡くなり、兄弟が2人いて、兄が会社を引き継ぎ、弟が会社と何ら関わっていない場合に、弟は、兄の了解を得ることなく、父の貸付金の2分の1を会社に請求していくことができます。

2 相続人が貸付金を請求するための証拠

貸付金を裁判で求めていくには、①金銭の交付の事実と、②返還の約束があったことの2点を証明していく必要があります。

相続人としては、まずは、会社の決算資料や総勘定元帳の開示を受け、それに記載された残債務額を会社に請求していくことになるでしょう。もし、会社や対立する相続人が任意に資料を開示しない場合には、株主の立場で、少数株主権の一つである帳簿閲覧請求をしていくことも考えられます。裁判例では、遺産分割協議が未了のうちに、法定相続分の4分の3の持分を有する相続人の1人から会社に対する帳簿閲覧の仮処分申請を認めた事例として、東京高裁平成13年9月3日決定があります。そのため、相続人の多数が会社の帳簿の閲覧を求めている場合には、遺産分割協議未了であっても、この決定を参考に開示請求をしていくことになります。

遺産分割協議未了で、かつ、会社法106条の権利行使者の協議もできておらず、帳簿の開示を求めている相続人の法定相続分が相続分の過半数に満たない場合、少数株主権としての帳簿閲覧請求が認められるかは、帳簿閲覧請求の性質を管理行為として解釈すれば、会社法106条の規定上、原則として難しいと考えられます。ただし、相続人の1人が会社法106条の権利行使者の協議もしないまま、違法に会社を独断で運営している場合には、会社としては、特定の相続人には会社法106条の規定によらない独断での権利行使を認める一方で、帳簿閲覧請求をする相続人にだけ会社法106条の規定を理由に少数株主権を否定するのは、矛盾行為ですので、許されないのではないでしょうか。

遺産分割協議中の株主の権利行使の方法については、こちらの記事をご覧ください。

なお、相続税の申告が必要な案件については、相続税の申告書の中から貸付金の金額が判明することもあります。

会社側からは、相続人において、役員との会社との間で行われた個々の金銭の動きの具体的な日付を立証する必要があるという主張がされることがありますが、そこまでの立証の必要はありません。この点が問題となった東京地裁平成30年2月9日(判例秘書L07330837)においても、そのような会社側の主張は排斥されています。

3 消滅時効について

役員が会社に対する貸付金について、会社から消滅時効の主張をされることがあります。これは、借り入れの事実を認めつつも、長期間ずっと返済していなかったことから、権利が消滅しているという主張です。

たしかに、一切、返済をしていない期間が長期間継続すると、民法又は商法の消滅時効という制度によって、消滅することがあります、借りた側が、借入残金を貸主に直接表明し、債務を自認していると、時効が中断され、時効期間がリセットされ、時効では消えません。

この点について問題となった裁判例として、東京地裁平成26年5月15日判決(ウエストロージャパン)があります。この裁判例は、元代表取締役であった原告が、代表取締役在任中に会社に金員を貸し付けたとして、会社に対し、貸金返還を求めた事案です。裁判所は、被告の総勘定元帳の短期借入金欄には本件貸付金の全てが計上されているなどとして、本件貸付けの事実を認めるとともに、原告は会社の代表者として確定申告書に署名捺印しているから、会社の債務承認があったとして消滅時効は成立しないと判断しています。

つまり、会社の決算書類には、役員からの借入金が残存していることが記載され、これを、貸主の立場でもある代表者が作成していたのだから、会社から貸主に対する直接の債務承認が認められたのです。

そのため、会社に対する貸付金を相続した場合で、会社が時効を主張してきた場合には、貸付をした被相続人が、会社の決算にどのように関与していたのか、確認する必要があります。

4 経営者の相続は弁護士へ

経営者の相続は、本記事のような貸付金だけではなく、株式についても、相続人間で公平に分割する必要があり、さらには、経営者の不動産を会社に利用させていることもあり、資産規模が大きくなることがあります。

資産規模が大きくなると、当事者だけで解決するのも困難となります。

経営者の相続は、まずは、弁護士にご相談ください。

相続を弁護士に依頼するメリットはこちらをご覧ください。

株式の評価に関する記事はこちらをご覧ください。

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