【参考事例】
夫が亡くなり、相続人は妻である私しかいません。遺産は家と土地(3000万程度 ※小規模宅地等の特例は適用後)と、預金が3000万円程度、併せて6000万円程度です。葬儀費用が150万かかりました。生前に、大きな贈与はありません。相続税の申告は必要でしょうか?
(1)まずは課税遺産総額を計算する
まず、課税価格(遺産の額)から基礎控除額をマイナスした課税遺産総額を計算します。
もし、課税遺産総額が、基礎控除によって、ゼロになるのであれば、相続税の申告は不要です。
課税価格はいくら
【不動産3000万+預貯金3000万】-【葬儀費用150万】
=課税価格5850万円
遺産の額から、債務や葬式費用を控除したものが、課税価格になります(相続税法11条の2、13条)。
基礎控除額はいくら?
基礎控除額は、3000万+(600万×法定相続人の人数)によって計算しますので、本件では3600万円が基礎控除額となります(相続税法15条1項)。
課税遺産総額はいくら?
課税価格5850万-基礎控除額3600万
=課税遺産総額2250万円
(2)課税遺産総額を法定相続分で按分して、速算表を適用し、相続税の額を算出
次に、課税遺産総額を法定相続分で按分して、按分した金額をもとに、相続税を計算します(相続税法16条)。法定相続人は妻のみであれば、2250万円について、速算表を適用して計算します。
2250万円×0.15-50万
=287万5000円

(3)配偶者の税額軽減
相続税額を計算した結果、287万5000円が取得した遺産に対応する相続税額になります。
しかし、妻には大きな減税制度があります。妻が取得した遺産額が1億6000万円に満たない場合には相続税はないものとする税額軽減があります(相続税法19条の2)。
課税価格が5850万である本件については、相続税の全額が軽減され、相続税の支払はありません。
(4)相続税の申告は必要!
上記の配偶者の税額軽減を受けることができる場合にも、相続税の申告書を提出しなければなりません。