遺産相続の流れ

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STEP06 | 遺産紛争の解決手段

6-2
「弁護士が解説する、遺留分(いりゅうぶん)の受け取り方と調停・裁判の流れ」

この記事の目次

1 遺留分とは?

遺言書で遺産を取得できないことになった相続人は、遺言書で多く取得しすぎた受遺者・相続人から、一定限度遺産から取り返すことができます。

また、遺言書がなくても、遺産のほとんどを生前に自分以外の者に贈与され、遺産からの取り分が少くなった相続人は、多く取得しすぎた受贈者から、一定限度遺産から取り返すことができます。

このように、相続人が、最低限度、遺産を取り返すことができる権利を遺留分といいます。

なお、よく混同されがちですが、遺留分と遺産分割協議は別の概念です。遺言書による取り決めがなく、現在も故人名義で存在する遺産を話合いで分けることを遺産分割協議といい、すでに他人が取得した遺産の一部を取り返すことを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)をすると表現します。遺産分割と遺留分は法的には別の問題ですが、遺産を取得しようとする手続という点で共通しています。

  遺産分割協議の詳しい記事はこちら

遺言書や生前贈与によって、遺留分に達しない遺産しか受け取れなくなってしまった状態を、「遺留分が侵害されている」と表現します。
なお、遺留分という権利を行使するかしないかは、それぞれの相続人の自由です。遺産がいらないときには、遺留分は主張しないという選択をすることになります。

以下、遺留分の計算方法について説明していきます。


2 遺留分の計算方法

2-1 計算の概要

まず、いくら取り返せることができるのかを検討するにあたって、遺産から自分に最低限確保されるべき金額(遺留分額)が、いくらあるのか計算する必要があります。
遺留分額が決まったら、現実に受け取った遺産との不足分(遺留分侵害額)を確定し、これを相続人や受遺者に返還請求していくことになります。

2-2 遺留分額の計算

現に残っている遺産だけを基準にすると、たとえば、生前に特定の相続人に生前贈与をして遺産をほとんど無くして、遺留分すら支払わないようにしようと考える相続人が現れます。そのため、遺留分額を計算するときは、生前の贈与も加算して、債務を控除した金額を対象に、個別的遺留分率を乗じます。

個別的遺留分率は、それぞれの法定相続分に総体的遺留分と言われるものを乗じたものです。

総体的遺留分は、2分の1、もしくは、3分の1です。だから、個別的遺留分率とは、法定相続分に2分の1、もしくは、3分の1を乗じたものとなります。

遺留分額の算出方法を整理すると

【(被相続人が相続開始時において有した財産の価額)+(生前に贈与した財産の価額)-債務】 × 個別的遺留分率=遺留分額

2-3 遺留分侵害額

遺留分額が分かったら、次は、遺留分侵害額を計算することになります。

自分が現に受け取った財産が、遺留分額に達しているのか確認し、もし、遺留分額に達していない場合には、不足する金額(遺留分侵害額といいます)を、取り返すことができます。

なお、遺留分額を計算するときに過去の贈与を加算したこととの均衡上、遺留分侵害額の計算においては、自分が過去にもらった生前贈与があるときには、この分を引いて計算する必要があります。
つまり、生前にたくさん生前贈与をうけた人が、遺言書によっては遺産を受け取ることができなかったとしても、それは遺産を受け取る時期が異なっているだけで、全体とみれば公平な分割となり、そのような場合まで遺言書に文句を言うことはできないのです。

遺留分侵害額の計算を整理すると

遺留分額-(自分の相続による取得額-相続債務分担額)-(自分が取得した特別受益の受贈額+自分が取得した遺贈額)=遺留分侵害額


3 遺留分を事例で解説

3-1 事例①

太郎さんの相続人は、子供の一郎君と次郎君の2人です。
太郎さんは生前に一郎君と次郎君に、それぞれ1000万円を贈与しており、さらに、残っていた遺産2000万円をすべて、一郎君に相続させるという遺言書を残して死亡しました。
次郎君はいくら取り返すことができるのでしょうか。

3-2 次郎君の遺留分額

まずは、次郎君の遺留分額を計算します。
遺産2000万円に、過去の生前贈与2000万を加算して、債務を減じます。ここでは債務が0とします。
次郎君の個別的遺留分は4分の1です(法定相続分2分の1×総体的遺留分2分の1)。
すると、1000万円が遺留分額、つまり、次郎君が守られないといけない権利となります。

【2000万円+2000万円-0】× 個別的遺留分4分の1
=1000万円

3-3 次郎君の遺留分侵害額

遺留分額1000万円を前提に、現実に取得した財産に照らして、取り返すべき金額を計算します。

遺留分額-(相続による取得額-相続債務分担額)-(特別受益の受贈額+遺贈額)
1000万-(0-0)-(1000万+0)=0円

遺留分侵害額は0となりました。
この場合、次郎君は、生前に受け取った1000万円があるため、最低限度の補償額である遺留分に達しているため、遺産を取り返すことができません。

3-4 事例②

それでは、先ほどの事例を少し変えて、遺産が3000万あり、すべて一郎君に相続させていた場合はどうなるでしょうか。

  • 遺留分額 (3000万+2000万-0)×4分の1=1250万円
  • 遺留分侵害額 1250万―(0-0)-(1000万+0)=250万円

この場合には、次郎君は、太郎さんから総額1250万円受け取る必要があったけれど、生前に1000万円しか受け取っていないので、遺言書で何ももらえないとすると、差額の250万円が不足している、つまり250万円、遺留分が侵害されていることになります。
この場合、次郎君は一郎君から250万円を取り返すことができるという結論になります。


4 遺留分減殺請求の期限と方法

4-1 遺留分減殺請求の期限

遺留分を主張して、遺留分額に不足する金額の返還を求めることを遺留分減殺請求といいます。
この請求は、死亡の事実および減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知った時から1年で時効により消滅します
また、死亡日から10年を経過すれば、遺言書の存在を知らなくても、請求できなくなります(民法1042条)。

4-2 遺留分減殺請求の方法

時効で消滅しないように、1年以内に遺留分を請求する旨の意思表示を行う必要があります。
口頭でも、遺留分を請求したことにはありますが、やはり、後日言った、言わないということにならないよう、文書で送付すべきでしょう。
最低限、「遺留分減殺請求を行使します」という文言が記載されていないと、何を主張しているか分からない文章になってしまうので、ご注意ください。


5 裁判で遺留分を争うポイント

5-1 手続の概要

遺留分減殺請求は、相続に関する紛争ではありますが、すでに遺言書がある場合に、その一部の返還を求める請求ですので、遺産分割とは制度が異なるものです。
したがって、遺産分割調停を行うのではなく、受遺者や相続人に対して、個別に、相続財産の返還を求める調停または地方裁判所への訴訟を提起する必要があります。

5-2 調停の流れ

まずは、当事者間で話合いがつかないときは、家庭裁判所に調停を申し立てます。
家庭裁判所の場所は、調停の相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
調停は、非公開の場で行われ、当事者同士が対面しなくても、調停委員や代理人を通じて解決を図る制度です。
遺留分制度は法律上の制度ですので、受遺者はこれに従い返還するしかないため、ほとんどの事例は、調停か、調停前の話合いにより解決されます。

5-3 民事訴訟の流れ

調停で話合いが成立しない場合には、地方裁判所(遺産などの額によっては簡易裁判所)に対して、民事訴訟を提起する必要があります。
訴訟では、おもに、遺産の額、債務の額、生前の贈与の有無・額、遺産の評価額などが審理されます。
遺留分減殺請求は、その計算が複雑になることが多く、弁護士の関与が事実上必要不可欠な訴訟類型となっています。
可能であれば、調停段階から弁護士を入れ、訴訟まで至らないよう解決することが望ましいでしょう。

 

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