遺産相続の流れ

FLOW

STEP06 | 遺産紛争の解決手段

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「弁護士が解説する、相続時に「親子関係」や「認知」を裁判で争う訴訟のポイント」

この記事の目次

1 戸籍制度と相続手続きの関係

戸籍は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するものです。

民法は、法定相続人の順位を定めており、例えば、第1順位の法定相続人は子です。そして、誰が子なのかについては、戸籍の記載に現れます(戸籍法13条)。
戸籍の記載は、事実上、真実と推定されます(最一小判昭28.4.23民集7巻4号396頁)。
したがって、戸籍に名前がなければ、その者の署名押印がなくても相続手続はできますが、戸籍に名前があれば、相続手続においてその者の署名押印も必要となります。

もし、戸籍に真実とは異なる血縁関係が記録されていても、真実は、各金融機関には判断できないので、いくら窓口でDNAが違うと言っても、その者の同意なく、単独で相続手続はできません。

真実の相続人が相続手続を進めるには、まずは、誤った戸籍を訂正するところから始める必要があります。


2 具体的な問題ケース

例えば、自分の子ではないと知りながら、嫡出子として出生届出を出して、間違った身分関係が記載されていることがあります。子でないのに子として記載されている場合には、戸籍上の兄妹にとっては、遺産を分け合う兄妹が1人余計に記載されていることから、自らの法定相続分が減ってしまいます。

逆に、夫婦でないカップルから生まれた子について、父親が認知をしないままの状態である場合、父親の戸籍に、その子が記載されていないという例があります。この場合、子は実父の遺産を全く受け取ることができません。


3 戸籍の訂正の方法

戸籍法には、いくつか戸籍を訂正する方法が列挙されています。
不適法な記載等の訂正(法113条)、無効な行為の記載の訂正(法114条)、判決による戸籍の訂正(法116条)です。

戸籍法113条や戸籍法114条は、争いはありますが、一般的に、戸籍の記載が不適法なことが明らかであり、関係者に争いがなく、また、相続人の範囲などの重要事項にかかわないものを対象としたものと考えられております。

したがって、相続人の範囲を争うようなケースにおいては、戸籍法116条による判決による訂正が必要です。
判決による訂正とは、つまり、裁判によって親族関係を戦わなければならないということです。


4 相続人の範囲を争う訴訟・判決の類型

戸籍の記載を変えるためには、裁判が必要ですが、親族関係に影響する裁判の種類は人事訴訟法2条に記載されています。

  • 婚姻の取消しの訴え
  • 婚姻の無効確認の訴え
  • 離婚の訴え
  • 協議上の離婚の取消しの訴え
  • 協議上の離婚の無効確認の訴え
  • 婚姻関係存否確認の訴え
  • 嫡出否認の訴え
  • 認知の訴え
  • 認知取消の訴え
  • 認知無効確認の訴え
  • 父を定める訴え
  • 親子関係不存在確認の訴え
  • 養子縁組取消しの訴え
  • 養子縁組無効確認の訴え
  • 離縁の訴え
  • 協議上の離縁取消の訴え
  • 協議上の離縁無効確認の訴え
  • 養親子関係不存在確認の訴え

5 親子関係不存在確認の訴えのポイント

実親子関係がないことを確認する訴訟を、親子関係不存在確認請求といいます。

事例で解説

太郎さんには、花子さんとの間の子として、一郎君が戸籍に記載されていました。
しかし、一郎君は、実は、花子さんが別の男性との間で懐胎した子でした。太郎さんは、自分の子と信じて出生届出を提出しました。
太郎さんの兄弟は、太郎さんの死後、この事実を知りました。

太郎さんの兄弟としては、太郎さんの遺産が、太郎さんと何の血のつながりもない一郎君に渡ることについて納得できないこともあるでしょう。もし、一郎君が子供として戸籍に記載されていなければ、太郎さんの遺産は兄妹に移った可能性があります。

しかし、実際に血縁が無くとも、戸籍に「子」として記載されている以上、相続手続においては、一郎君が子として扱われることになります。

もし、この事実を変えたいのであれば、一郎君の父子関係に利害のある方、つまり、兄弟姉妹や親が、家庭裁判所に親子関係不存在確認の調停を申し立てることで、戸籍の記載を訂正できる可能性があります。

訴訟選択は慎重に

ただし、一郎君が生まれた時期が、太郎さんと花子さんの婚姻成立の日から200日経過後であり、いわゆる推定される嫡出子である場合には、一定期間が過ぎていると親子関係を争うことができなくなってしまいます。
子の生まれた時期、婚姻時期、離婚時期によっては、訴訟類型が変わってきますので、訴訟を提起する場合は慎重に行いましょう。

権利の濫用として覆せないことも

また、仮に、親子関係不存在確認の調停の中で、DNAが合わないことが判明しても、出生から長期間が経過していると、子の親子関係の不存在を明らかにすることで著しい不利益がある場合には、権利の濫用として戸籍を変えられないこともあります。


6 認知の訴えのポイント

婚姻していない男女間に子供が生まれた場合、父子間に生物学的な親子関係(DNAの一致等)があったとしても、父が子を認知しなければ法的な親子関係(相続権)が生じません。
もし父親が生きていれば、生前に認知をしてもらえれば良いですが、認知をしないまま死亡し、他の実子や兄弟姉妹との間で相続紛争になることがあります。

他の相続人は、戸籍上記載されていない子を無視して手続を進めようとすることがあります。そもそも、戸籍に記載されていないので、気づかないまま手続が進むことがあります。

この場合、認知を求める子は、認知の訴えを提起しなければなりません。
誰に対して訴えるかについてですが、父は既に死亡しているので、父親の代わりに、検察官を被告として訴訟を提起します。検察官が被告となるのは、身分関係の確定という公益性の高い訴訟だからです。
認知の訴えは、父が死亡した日から3年以内に行わないといけないという出訴期間が定められています(民法787条ただし書き)。

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