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借地上の建物の管理者がいなくなった場合の地主の対応は?所有者不明建物管理制度を解説

土地・建物の相続 相続の放棄 2022.07.10

1 はじめに

土地を賃貸して、賃借人が建物を建築する場合、本来は、賃借人が建物を解体して、更地にして返還するのが原則です。

しかし、賃借人が死亡して、相続人が相続の放棄をした場合や、賃借人が法人のケースで破産してしまい破産財団から放棄されてしまった場合など、実際に管理をしていく人がいなくなり、地主としては、解体したくても、誰と話を進めていいのか困る場合があります。また、その建物の売却価値がある場合に、第三者が建物を買い取ろうとしても、誰から購入していいか分からず困るという場合もあります。

そういった場合の対応として、これまでは、賃借人が個人であれば①不在者財産管理制度や②相続財産管理制度という制度で対応し、賃借人が法人であれば③会社の清算人制度を利用していました。

これらの制度は、弁護士などを裁判所が選任し、弁護士が、いなくなってしまった人の代わりに、利害関係者と不動産の処分について協議していく制度です。

しかし、これらの制度は、特定の不動産だけの処分として利用することはできず、たとえば、賃借人のその他の財産の調査なども全て行う制度でした。例えば、相続財産管理人として選ばれた弁護士は、借地上の不動産の処分だけではなく、亡くなった賃借人の生前の預貯金が残っていないか、それ以外の不動産が残っていないか等も調査し、山や畑などのその他の財産もあれば、その全てを清算していく必要がありました。そのため、処分がしたい不動産が1つであっても、全体の手続が重くなりがちで、申立費用が高額になることがあるというデメリットがありました。

このようなデメリットを解消するため、民法が改正され、令和5年4月1日から、所有者不明建物管理制度という新しい制度が始まることになりました。

 

2 所有者不明建物管理制度とは?

新しくできた民法264条の8という条文で、所有者が不明な建物については、裁判所が、所有者不明建物管理人を選任し、その管理人が、裁判所の許可を経て、建物を処分することができるようになりました。

たとえば、借地人の相続人の全員が相続の放棄している事案など、所有者が現れる予定がない事案において、老朽化した建物の解体の必要性がある場合には、管理人が裁判所の許可を経て、解体するということもあり得ます。ただし、管理人には、自腹で解体費用を出す義務はないので、古い建物の解体を目的として、管理人の選任をする場合には、通常は、管理人の選任を申し込む人(たとえば、地主など)が、解体費用を納付することになります。

 

3 相続財産清算人(相続財産管理人)の選任による対応

従前からある相続財産管理人制度は、相続財産清算人制度と名前を変更して、存続しています。

そのため、所有者不明建物管理制度ではなく、相続財産清算人制度を利用することもできます。

所有者不明建物管理制度は、特定の建物の管理をするための制度ですので、相続財産清算人(管理人)のように広く財産調査をするものではありません。そのため、借地上の建物自体には財産的価値がなく、他の遺産が存在する場合には、相続財産清算人(管理人)制度を利用した方が、未払の賃料や解体費用などを余剰の相続財産から支出してもらえる可能性があります。

ただし、相続の放棄をしているケースでは、経緯として財産がないから相続人が放棄しているということも多いため、流動資産がなく、やはり、未払賃料や解体費用は、地主負担となるケースも多いでしょう。実際、財務省の通達(財理第3992号「国庫に帰属する不動産等の取扱いについて」)によれば、残余不動産の建物が民有地上に所在している場合は、相続財産管理人に対して、残余不動産の建物を当該民有地の所有者に取得してもらうことを依頼する旨の記載があるので、注意が必要です。

 

4 賃借人に相続が発生した場合には弁護士へ

賃借人に相続が発生した場合には、まずは、相続人調査を行い、相続人と借地契約の変更について交渉をする必要があります。

また、万が一、相続人が相続の放棄をするなどして、管理者がいなくなった場合には、所有者不明建物管理制度や相続財産清算人制度を利用して、建物の処分をしていく必要があります。

このような手続きは複雑ですので、是非弁護士にご相談ください。

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