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相続した土地を国に受け取ってもらう方法は?相続土地国庫帰属制度を解説。

土地・建物の相続 相続の放棄 2022.07.07

1 はじめに

近年では持ち家も少なくなり、不動産を所有している世帯も減少しています。

しかしながら、いざ相続が発生すると、ほしくもない不動産を何筆も相続することもあります。

相続放棄をすれば不動産を相続しないで済みますが、預貯金などもあり、全てを放棄することはできないこともあります。

一度、土地を相続すると、その後、原則として、売れるまで固定資産税の負担をする必要があります。

こういった悩みを解決する制度が、令和5年4月27日から始まります。それは相続土地国庫帰属制度という制度です。

 

2 令和5年4月27日から始まる相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度とは、相続人が相続や遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たすことを条件として、土地の所有権を国庫に帰属させる制度です。

根拠法令は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。

従来、国庫に帰属させる手法としては、相続人全員が家庭裁判所において相続放棄をした上で、相続財産管理人という裁判所が選任した弁護士等による財産換価を経る方法しかなく、この制度は、時間も長期間かかり、大前提として、相続人全員の相続放棄が必要でした。そのため、相続から3カ月が経過して、相続の放棄ができる期間を過ぎていると、もう、第三者に売れるまで、ずっと、管理を続けるという運命にありました。

そのため、土地を国庫に帰属させる手法が新しく1つ加わったということで、この制度の利用の普及が期待されています。

3 相続土地国庫帰属制度の要件

しかしながら、国庫帰属をさせるには、大きく分けると3つの要件があります。

それは、負担金を納付すること、却下事由に該当しないこと、不承認事由に該当しないことです。

(1)負担金の納付(10条)

10年分の管理費由を納付する必要があります。

(2)却下事由(2条3項)

以下の土地は、国庫帰属の申請が却下されます。

① 建物の存する土地

② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

③ 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

④ 土壌汚染対策法第二条第一項に規定する特定有害物質により汚染されている土地

⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(3)承認事由(5条1項)

以下の土地は、承認申請が不承認となります。現地調査などの結果、国が管理をするにあたって、過分な費用や労力がかかると判断された土地は、不承認となります。

① 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

② 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

③ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

④ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

⑤ 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

 

4 建物が建っていると却下となる。

建物が建っていると、それだけで却下となります。

自治体によっては、空き家の建物の解体費用を助成してくれる制度があるので、助成金がないか自治体に確認しましょう。

相続人が他にもいる場合には、相続人全員で、お金を負担できないか話合いましょう。

解体する費用がなく、国庫帰属ができない場合には、漫然と放置するのではなく、風などで屋根がはがれて、近隣に迷惑がかからないようにネットを張るなどを最低限の防災措置をとりましょう。

 

5 担保権が設定されると却下となる。

相続した土地に、抵当権などの担保が残っていることがありますが、ただの消し忘れのこともありますし、消滅時効などで消せる場合もあります。法務局で、担保権がついていないか確認し、担保権が付いている場合には、弁護士にご相談ください。

 

6 境界でもめていると却下となる。

隣接者と境界でもめている場合には、境界について話し合うか、そもそも、いらない土地であれば、隣接者に土地を贈与する、つまり、ただでもらってもらうのも一つの解決策です。

 

7 ご相談は弁護士へ

相続土地国庫帰属制度の申請先は法務局です。

弁護士は、この申請自体を代行することや、申請をする前提として、共有者との協議や、担保権の抹消など、サポートすることができます。

また、相続土地国庫帰属制度が利用できない場合には、従前の方法である相続放棄による国庫帰属制度の対応も可能です。

不動産の処分についてお悩みごとがある場合には、お気軽にご相談ください。

相続を弁護士に依頼するメリットは、こちらをご覧ください。

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