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遺産分割で、相続した株式の価値(評価)はどうやって計算するのか?弁護士が解説

会社支配権紛争・株式の相続 相続手続き・遺産の分け方(遺産分割・遺留分) 2022.06.11

1 どうして相続した株式の評価の必要性があるのか?

上場株式であれば、株価は、新聞でも公表されているため、特別、株式の評価額を調べることは難しくありません。

しかし、トラブルになりやすいのは、上場していない会社の株式です。典型的には、両親が設立した中小の株式会社について、もともと両親がほとんどの株式をもっていたのに、事業承継などの対策をすることなく死亡してしまった場合に、子供たちの間で、どのように分けるかという問題です。

たとえば、全株式が100株ある株式会社の株を子供2人でどうわけるかという場合に、50株ずつ分けて相続しては、もし、2人でもめたときに、どちらも過半数の議決権がないため、会社の重要な決定ができないことになります。

また、今後の株主総会は子ども2人のうちどちらが出席していくのか話合いをせずに株式を父親名義のままにしていると、会社からすれば、子ども2人のうち、どちらが適切な権利者が分からないし、片方だけ特別扱いもできないので、2人とも株主総会に出席することもできません。

こういった場合に、多く考えられる選択肢としては、事業を承継する子供が、株式を全て相続する代わりに、他の相続人に金銭を支払うという分け方です。

そこで、相続人に払うお金を計算するためにも、株式の価値がいくらなのか、評価をしていく必要があります。

以下、株式の評価の方法について解説していきます。

株式について、評価以外についての記事はこちらの記事をご覧ください。

2 相続した株式の評価の方法は?

(1)取引相場のない株式(非上場株式)の評価の流れ

遺産分割制度は、民法という私法の中での制度ですので、民法の規定をもとに、手続が進みます。

しかし、民法には、直接、非上場株式の計算方法を決めた条文はありません。

そのため、まずは株価について相続人間の話合いで決め、話合いがつかなければ、最終的には、「鑑定」という手法で株価を決定します。鑑定とは、一般的には裁判所が指名した公認会計士等の専門家に、株価についての鑑定書を作成してもらう制度です。

ただし、鑑定には公認会計士の費用がかかることから、当事者間でまずは話合いを継続するべきです。

(2)話合いの指針になるルール

株価の計算方法は大きく分けると3つあります。それは、収益方式(インカムアプローチ)、純資産方式(ネットアセットアプローチ)、比準方式(マーケットアプローチ)です。3つと言っても、この3つの計算方法もさらに細分化されており、また3つの計算方法を混合させて平均をとるなどのパターンもあるため、非常に複雑です。

それぞれの計算手法や、組合せの方法を示すものとして、参照すべき資料として以下のものがあります。

  •   ①財産評価基本通達(国税庁が定める相続税上の評価)
  •   ②企業価値評価ガイドライン(日本公認会計士協会)
  •   ③経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン(中小企業庁)

このうち、①の財産評価基本通達は、全国で画一的に相続税を徴収するため、純資産方式や比準方式の各計算手法や計算手法の組合せの配分まで含めて細かく決まっており、計算者によって計算額に差はそこまで出ないことが通常です。相続税の申告をするほど財産がある事案においては、すでに税理士において相続税評価を計算済みであることが多く、新たな計算コストもかからないため、遺産分割紛争においては、この金額を前提に合意することも多くあります。ただし、①の財産評価基本通達は、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から、画一的に財産を評価するのが相当であるという趣旨から作られたルールですので、親族間の個別具体的な遺産分割紛争で、必ず正しい株価を示すとは限らないものです。

②の企業価値評価ガイドラインや③の経営承継法における非上場株式等評価ガイドラインでは、計算手法は紹介されていますが、具体的な計算結果は、計算者によって差がでるケースが多いと考えられます。

 

3 株価の純資産方式による計算方法とは?

ここまで説明してきたように株価の計算方法としては大きく分けて収益方式と純資産方式と比準方式がありますが、この中の純資産方式について説明します。

純資産方式とは、会社の決算書の中にある貸借対照表上の純資産の額(資産から負債を控除して求めた額)に着目して計算する手法です。

純資産方式は、当該会社の過去の計算資料をベースに金額を計算します。そのため、土地や建物といった資産をいくらと再評価するか、未計上の負債はないか、といった資産や負債の評価の問題はあるものの、純資産(資産から負債を控除して求めた額)を発行済株式の総数で割ることで1株あたりの価値を計算することができますので、計算手法自体は収益方式や比準方式に比べて分かりやすいものです。

通常、相続税の申告は、純資産方式の一種である純資産価額方式と、比準方式の一種である類似業種比準方式を、一番相続税が安くなるように組合せるか、あるいは単独で使用して計算しているため、相続税の申告で利用した株価は、純資産方式だけではなく、比準方式も併用した計算であることが多いです。なお、相続税評価の純資産価額方式という計算手法は、画一的な財産評価のため、資産を財産評価基本通達の規定により評価しますので、資産や負債の評価方法が、やや硬直的な面があります。

 

4 遺産に株式がある場合には弁護士に相談を

遺産に株式が含まれている場合、株式の分割方法について間違えると、今後の会社運営に重大な支障が出たり、遺産を適正に配分できなかったりと、不利益を被ることがあります。

預貯金だけではあれば、分割協議は簡単ですが、債務や株式や不動産といった資産が遺産に含まれている場合には、弁護士と一緒に遺産分割協議を行うことをお勧めします。

相続を弁護士に依頼するメリットについては、こちらをご確認ください。

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