遺言執行者とは? 選び方・資格・業務・報酬を弁護士が解説!
1 遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言者の死後、相続人に代わって、遺言に記載された内容を実現していくことを遺言で任された人のことです。
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利と義務をもっています(民法1012条1項)。
よく遺言執行者と受遺者を混同されていることがあります。遺言執行者は、「遺産を受け取る人:受遺者」と決められた人のことではありません。遺言執行者とは、受遺者のために、遺言の内容に従って、預金や現金、株等の遺産の名義の変更を行う人のことです。
相続人全員が手続に協力することが期待できる事案には、遺言執行者がいなくても、名義変更が進んでいきますが、反対に、相続人が協力しないような事案に、遺言執行者を指定しておけば、相続人全員の協力が得られなくとも、遺言執行者が、相続人に代わって、手続を断行することができます。
2 遺言執行者の選び方
遺言執行者は、事案によって、存在する場合と存在しない場合があります。
まず、遺言であらかじめ遺言執行者になる人を指定しておけば、その人が遺言執行者になります(民法1006条1項)。
また、遺言執行者がいない場合でも、利害関係人が、家庭裁判所に申し込むことによって、弁護士などが選任されることがあります(民法1010条)。
遺言で指定がなく、かつ、利害関係人も申し込みをしないときは、遺言執行者がいないまま、相続人全員が協力して、手続を進めていくことになります。
3 遺言執行者の資格
未成年者と破産者は、遺言執行者となることができません(民法1009条)。
受遺者や相続人は、遺言執行者となることができます。
また、弁護士や司法書士も遺言執行者となることができます。
遺言執行者は、遺言の内容にそって、権利を実現しなければならないので、遺言で財産を得られなかった相続人との間で紛争状態になることが多いです。そのため、相続人との紛争が予想される場合には、弁護士や司法書士が遺言執行者に指定されることが多いです。
ですが、相続人が1人であったり、相続人同士の仲がよければ、揉める心配が少ないので、親族が遺言執行者となることが多いです。
遺言執行者を決めておけば、相続人に遺言の内容も知られずに名義を変えれると考えて、安易に親族を指定してしまうことがありますのが、後に説明するとおり、遺産の内容などを開示する義務があるので、結局は、相続人に遺言の内容が知られてしまいます。そのため、遺言の内容が相続人に伝わることを前提に、揉めそうな事案では、専門家を遺言執行者に指定しておくと良いでしょう。
4 あなたが遺言執行者になった場合の業務内容
遺言執行者には、遺言の内容を実現するという役割がありますが、その業務内容について法律でルールがあります。弁護士や司法書士だけでなく、受遺者や親族が遺言執行者となっていた場合でも、その責任は同じです。
具体的には、以下の行為が必要です。
①相続人や金融機関への就任の通知(改正民法1007条2項、民法1013条1項)
②財産目録の作成(民法1011条)
③財産目録の相続人への交付(民法1011条)
④名義変更手続き(民法1012条)
⑤相続人への業務終了通知(民法1020条、655条)
遺言執行者の業務で難しいのは、相続人との対立です。もし、遺言に不満を持つ相続人が、遺産をかってに処分しようとしている場合には、遺言執行者が相続人を止める義務があります。
5 他の親族や弁護士が遺言執行者になった場合の対応
前述したように、遺言執行者は、相続人に遺産目録を交付すべき法律上の義務がありますので、交付を請求しましょう。また、遺言書が遺留分に違反している場合もありますので、遺言執行者に遺言書の内容を確認しましょう。
6 遺言執行者の報酬の決め方
遺言執行者は、その執行業務について報酬を受け取ることができます。
あらかじめ、遺言で報酬額が定まっている場合には、その報酬を受け取ることができます(民法1018条1項ただし書き)。
また、遺言で報酬が定まっていない場合には、家庭裁判所に報酬を決めてもらうことができます(同項本文)。一般的に、報酬額は、遺産の額が多ければ、高くなる傾向にあります。