STEP05 | 税務申告
5-1
遺産を相続した場合にかかる税金の種類と申告期限を弁護士が解説
この記事の目次
1 遺産を相続した場合にかかる税金の種類
遺産を相続をしたことに対する税金は相続税です。
しかし、故人の生前に発生した所得で未申告のものがあれば、相続人が所得税を申告する義務があります。
また、土地や建物などの不動産が遺産に含まれている場合には、これらの不動産の名義を変えるための登録免許税という税金を納付する必要があります。
以下、納税期限が近い順番に解説します。
2 所得税の申告の期限
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。通常、所得税の申告期限は、3月15日です。
しかし、所得者が死亡した場合には、3月15日ではなく、相続の開始があったことを 知った日の翌日から起算して4か月を経過した日の前日(例えば、死亡した日が5月20日であるときは、9月20日)までに、相続発生年の故人の所得を申告する必要があります。
これを所得税の準確定申告といいます。
3 相続税の申告の期限
3-1 原則的な期限
所得税は、故人の生前の利益について課税されるのに対して、相続税は、故人から相続人への財産の承継に対して課税される税金です。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月目の日です(相続税法27条1項)。
たとえば、死亡した日が5月20日だとすると、翌年の3月20日が申告の期限となります。
被相続人から相続、遺贈、相続時精算課税に係る贈与等によって財産を取得した各人の課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合、その財産を取得した人は、相続税の申告をする必要があります(相続税法16条)。
遺産に係る基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)という計算式で計算します(相続税法15条1項)。
各人の課税価格の合計額が、この基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要です。
3-2 遺産分割協議が成立していない場合の相続税の対応
相続税は、遺産全体に対する相続税額を、実際に取得した遺産の額に応じて按分して納付するのが原則ですが(相続税法17条)、申告期限である10か月のうちに、すべての遺産分割協議を終えることは必ずしも容易ではありません。
そこで、分割が未了の場合には、いったん、申告期限である10カ月以内に、仮に、法定相続分に従って取得したと仮定した場合の相続税額を納付する必要があります。
その上で、そのあと、別に、遺産分割が済んだ時点から4カ月以内に、実際の取得金額に応じて、修正申告又は更正の請求をすることになります(相続税法55条、32条1項1号)。
この最初の10カ月以内にする申告の計算では、相続人の誰がいくら相続するか確定しないため、税額の軽減の制度が利用できない前提での計算となり、納税額が実際の額より増えることがあります。
申告期限内に、遺産分割協議が成立していなくとも、申告期限内に、申告はしないといけないので、注意が必要です。
3-3 遺産分割は3年10カ月以内に解決するのが良い理由
遺産分割が10カ月以内に終わっていない場合には、遺産分割が済んでから修正申告又は更生の請求をすることになりますが、できれば、遺産分割は3年10カ月以内に終わっておくのが良いです。それは、税金の優遇措置の中には、3年10カ月を過ぎると原則として使えなくなるものがあるからです。
相続税について配偶者の税額軽減が認められる期限
配偶者の税額軽減とは、妻が取得した正味の遺産額が、1億6000万円に満たない場合、または、課税価格の合計額に配偶者の法定相続分をかけた金額以下である場合には、配偶者の相続税がかからないようにするという特例です(相続税法19条の2の第1項)。この軽減制度は、大幅に相続税を減らすことができる重要な制度ですが、前述のとおり、妻がいくら相続するのか確定していないと、使えない制度です。
そのため、10カ月の申告期限においては、この軽減を使わない前提で納付するのですが、その後、遺産分割協議をいつまでも放置していてもよいわけではありません。すなわち、この特例を適用するには、原則として、遺産分割が申告期限から3年以内(相続から3年10か月)に済んでいる必要があり、これを過ぎると、配偶者の軽減が受けられなくなる可能性があります(相続税法19条の2の第2項)。
遺産分割が長期化するケースは多々ありますが、この3年10カ月を、1つの区切りとして解決するのがよいでしょう。
3-4 相続税額を非上場株式の取得費に加算する特例も
3年10カ月以内に遺産分割を解決するのがよい理由は他にもあります。たとえば、遺産に非上場株式が含まれており、この株式を第三者に売却する場合、3年10カ月以内の譲渡であれば、株式を相続するために納付した相続税を、譲渡所得の経費として控除することができます。
株式に関する優遇措置の記事は、こちらの記事をご覧ください。
4 不動産の名義変更の登録免許税の期限
登録免許税は、法務局で、不動産の名義を変更する所有権移転登記申請をする際に、印紙を購入して納付するのが一般的です。
不動産の名義変更の期限は、原則として、相続を知ってから3年です(不動産登記法76条の2)。
登録免許税の計算例については、こちらの記事をご覧ください。
5 遺産の分割方法で交渉が必要は場合は弁護士にご相談ください。
以上のように、いつまでも遺産の分け方が決まらないと、納税額にも影響がでます。
遺産相続で関わる専門家としては、税理士・弁護士・司法書士などが挙げられます。
この中で、相続人同士や第三者との交渉が必要な相続事件の解決は、弁護士が専門です。
そして、以下のようなケースでは、弁護士に依頼することで、相続問題を解決できる場合があります。
- 交通事故や労災事故で死亡したので損害賠償請求をしたい。
- 相続人と連絡がつかない
- 遺産として何があるかが分からない
- 遺言書の内容に納得ができない
- 生前に多くの贈与がされており残った遺産だけでは平等ではない
- 不動産の分け方がきまらない
- 株式の分け方がきまらない
- 会社が保険料を払っていた生命保険があるけれど会社と話がすすまない
- 供養の費用でもめている
- 調停や裁判の代理をしてほしい
- 相続の放棄をしたい
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