STEP01 | 亡くなった後に行う手続き
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弁護士が教える相続に必要な出生から死亡までの戸籍謄本等の取り寄せ方
この記事の目次
1 戸籍制度の概要
日本の家族関係を整理するため、市町村は、その区域内に本籍がある夫婦と子を1セットとして、戸籍簿を編成しています(戸籍法6条)。
結婚すると、夫婦で新しい戸籍を作成し、夫婦のいずれかを筆頭者に、もう一方を2番目に、お子さんが生まれたら3番目以降に記載します(同14条)。
戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍で特定します(同9条)。例えば、夫を筆頭者としている場合には、その子は、「夫の戸籍に入っている」と表現します。
2 事例で分かる戸籍制度
相続が発生したときに、どのような戸籍が必要になるか事例で紹介しましょう。
花子さんと太郎さんが結婚し、一郎君が生まれました。花子さん(妻)が先に死んだときに、太郎さん(夫)や一郎君(子)は、どの戸籍を揃えれば、花子さんの相続手続ができるのでしょうか。
太郎さんが戸籍の筆頭者の場合、花子さんや一郎君は、太郎さんの戸籍に入っています(戸籍法9条)。
そして、戸籍に入った親族が死亡すると、死亡の年月日は、死亡届出によって役所に伝わり(戸籍法86条)、役所で戸籍に記載されます(戸籍法施行規則35条6号、40条1項)。
死亡すると、死亡した人は、戸籍から除かれます(戸籍法施行規則40条1項)。除かれるといっても、跡形もなく削除されるのではなく、身分事項欄に、死亡により除籍された旨が記載されます。これを「除籍される」と表現します(戸籍法23条)。
そのため、太郎さんの戸籍謄本を取得すれば、①花子さんが太郎さんの配偶者であり、②一郎君は子であり、③花子さんは死んで除籍されていることが分かります。
さて、太郎さんの戸籍謄本だけで、花子さんの相続を証明する証拠として十分でしょうか。
一見、花子さんの相続人は夫である太郎さんと、子である一郎君で明らかと思われます。
しかし、答えはノーです。
太郎さんの戸籍に記載されている花子さんの情報は、太郎さんと花子さんが結婚したときからのものしか記載されていません。
つまり、花子さんとの結婚前の情報が記載されていないのです。
もしかしたら、花子さんには、婚姻歴が過去にあり、別の男性との子がいるかもしれません。
別の男性との間の子がいるのかどうかは、太郎さんの戸籍を見ても分からないのです。
したがって、花子さんの相続手続には、花子さんが太郎さんの戸籍に入籍する前の戸籍も調査する必要があります。
「花子さんには、太郎さんとの間に生まれた一郎君以外に、子がいないこと」、これを証明するため、太郎さんの戸籍だけでなく、花子さんが生まれたときから婚姻するまで全ての戸籍を揃えていく必要があるのです。
また、戸籍は、明治、大正、昭和と、それぞれの時代によって様式が異なり、改製されてきました。
古い情報は、新しい改製後の戸籍にすべては転記されていません。そのため、戸籍が改製されている場合には、戸籍の改製前の戸籍(改製原戸籍といいます)も必要となります。
したがって、結局のところ、改製前の戸籍も含めて、花子さんの出生から婚姻までの戸籍を全て揃える必要があります(まれに、婚姻歴を隠すために転籍等をしている方がいますが、相続手続の際に全て明らかになってしまいます。)
ポイント
1 相続手続には、亡くなった人の、生まれたときから死ぬまでの戸籍が必要である。
2 戸籍の形式が改製されているときは、改製前の戸籍(改製原戸籍)も必要である。
3 故人が婚姻していた場合には、婚姻前の戸籍も必要である。
3 戸籍の取得方法
相続人ご本人でも、きちんと手順を踏めば戸籍を揃えることができますが、通常、弁護士や司法書士に戸籍を揃えてもらい、名義変更を行っているケースが多いです。
取得した戸籍謄本は、ほとんどの名義変更手続で原本を提出しなければならず、複数枚用意する必要があり、多くの時間と費用をとられてしまいます。
なお、平成29年5月29日から、法務局にて一度戸籍を登録すれば相続情報を集約した証明書を発行してもらえる制度(法定相続情報証明制度)が始まりましたので、この証明書を取得すれば、その後の手続が簡易になりますが、この証明書を発行してもらう作業が複雑で、専門家の協力が必要です。
さらに、市町村は、その区域内に本籍がある方の戸籍しか管理しておらず、戸籍が一か所で揃わないことも多いです。
上記の例でいえば、婚姻前の身分関係が記載された花子さんの入籍前の戸籍は、入籍前の本籍地の市役所で取り寄せる必要があります。
配偶者や子であれば、戸籍謄本の交付請求の資格があります(戸籍法10条1項)。
4 戸籍で説明できないこと
戸籍には本籍地が記載されていますが、「住所」が記載されていません(戸籍法13条)。
したがって、故人の住所を証明したいときは住民票の除票の写しが必要となります。
戸籍を取得されるときに、併せて住民票の除票も取得するのが良いでしょう。