STEP01 | 亡くなった後に行う手続き
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弁護士が使っている、遺言書の保管場所を探すコツと有効性の確認方法
この記事の目次
1 遺言書の種類
このページでは、遺言書の種類や、相続開始後の遺言書の利用方法について説明します。遺言書の作成方法については、遺言書の作成専門サイトをご覧ください。
遺言書には、大きく分けて、普通の方式の遺言と、特別の方式の遺言があります(民法967条)。
普通の方式の遺言には、①自筆証書遺言(968条)、②公正証書遺言(969条)、③秘密証書遺言(970条)の3つがあります。そして、このうち①の自筆証書遺言は自分で保管するという方法と、法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づいて法務局に保管してもらう方法があります。なお、法務局で自筆証書遺言を保管してもらうと、「検認」という手続を省略できるので近年普及しています。
特別の方式の遺言には、①死亡の危急に迫った者の遺言(976条)、②伝染病隔離者の遺言(977条)、③在船者の遺言(978条)、④船舶遭難者の遺言(979条)の4つがあります。
特別の方式の遺言は、普通方式の遺言を作成することができないケースで特別に認められた方式です。あまり、実際にお目にかかることはありません。
多く作成されているのが、自分で書いた自筆証書遺言と、公証役場で作成する公正証書遺言です。
2 自筆証書遺言の捜索と有効性の確認方法
2-1 捜索方法
遺言書がみつからないと、被相続人(故人、亡くなった方のこと)の意図と異なる遺産分割がされることがあります。
まずは、自宅の金庫や重要な書類を収納している場所に遺言書がないか、確認しましょう。
また、自宅以外の場所、例えば貸金庫などに保管していないか確認しましょう。
なお、2020年7月10日以降は、法務省が自筆証書遺言を保管するサービスを開始しますので、将来は、遺言書がないか法務省に問い合わせる方も出てくると思います。
2-2 有効性の確認方法
よく、故人が文章を書いているけれど、遺言と言えるのか疑義がある文章が出てくることがあります。メモ帳やコピー用紙に記載されたものなどです。
自筆証書遺言が有効であるためには、①遺言を書いたときに意思能力があり(民法963条)、②遺言が民法の定める方式になっていること(民法960条、968条)が必要です。
意思能力とは、自らが遺言を書くことの効果を認識する能力です。
たとえば、下書きをなぞって書いただけで、誰に渡すか本人に確認しても再現できない場合には、これが否定され、無効な遺言となります。
自筆証書遺言の方式としては、遺言の全文、日付、氏名を自書し、印が押してあることです。印は認印でも指印でもかまいません(民法968条1項)。
紙の指定はありません。コピー用紙でも、手帳の切れ端でも方式としては有効です。
なお、民法が改正され、2019年1月13日以降に作成される自筆証書遺言については、遺言書に財産の目録を添付する方式をとる場合に、目録1頁ごとに氏名を自書して印を押せば、目録自体は自書しなくても良いことになりました(民法968条2項)。つまり、目録についてパソコンで作成して良いのです(法務省のHPにイメージ図がありますので、ご参照ください。)。いままでは、不動産の地番や証券番号なども手書きで書いていたのを、パソコンで作成できるようになるということです。
3 公正証書遺言の捜索
次に、公証役場に遺言書が保管されていないか確認しましょう。
公証役場で被相続人が遺言書を作成している可能性があります。
公証役場で作成された遺言書は、原本が公正証書役場で保管されています。
公証役場は日本中のあちこちに存在しており、管轄というものはないので、被相続人がどこで作成したか分からないことが多いですが、最寄りの公証役場でも全国の公証役場に遺言書があるかないか検索することができます。
遺言書があると分かれば、保管している公証役場に遺言書の謄本の交付の請求をしましょう。
例えば、相続人の1人が公正証書遺言の謄本を所持しているけれど、他の相続人に対して開示してくれないというとき、自ら公証役場に謄本の請求をすれば、遺言書の内容を知ることができます。
自筆証書遺言が見つかっても、それとは別内容の遺言が公証役場で見つかることもあります。
公正証書遺言は、必要な期間、保存されるよう法律で決まっています(公証人法施行規則27条1項・3項)。概ね、遺言書を書いた人が120歳程度の年齢になる時期まで保管されています。
紙媒体としてだけでなく、電磁的記録としても二重に保管されており、捜索が容易になっています。
4 検認手続とは?
相続人の誰かが遺言書を発見したら、それが公証役場で作成された遺言や法務局で保管されている遺言以外であれば、家庭裁判所で検認の手続をしなければなりません(民法1004条1項)。
検認とは、いわば、遺言書のお披露目会のようなものであり、他の相続人も裁判所に呼ばれ、遺言書の存在を確認することができます。
検認の具体的な作業は、遺言書の内容の朗読、閲覧、調書の作成です。
検認の申立先は、相続を開始した地、すなわち、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法209条1項)。
もし、遺言書が封印されている場合には、家庭裁判所で開封しなければなりません(民法1004条3項)。
家庭裁判所で開封する前に開封してしまうと、相続人同士で偽造したのではないかと争いになってしまうので、それを防ぐために検認前の開封を禁じているのです。
封印とは、封筒に入れた上で、封に押印がされていることです。蓋が開いたままの封筒に封入していただけの遺言書を取り出したとしても、開封には該当せず、問題はありません。
検認する前に、裁判所外で開封をした場合には、過料に処せられることがあるので注意が必要です(民法1005条)。ただし、開封したからとって、相続権がなくなるわけではありません。
このような検認や開封の制限は、改ざんをふせぐための規定ですので、改ざんのおそれがない公正証書遺言では、そのような制限をする必要がなく、検認は不要で、開封にも制限はありません。
5 遺言書が見つかったあとは
遺言書が見つかったら、遺言書の指示にしたがって、名義変更を行う必要があります。
なお、遺言書を発見したところ、内容が自分に悪いからといって、これを隠匿した場合には、ペナルティーとして、相続人の資格を失うことがありますので注意が必要です(民法891条5号)。