STEP02 | 相続人の調査
2-1
相続人は誰?弁護士がまとめた相続順位と相続権利を持つ親族
この記事の目次
1 相続人とは?
故人の遺産を「包括的に承継する」ことができる人を「相続人」といいます。
包括的に承継するとは、プラスの財産だけではなく、借金も含めて引き継ぐことを意味しています。
分かりやすい言い方をすると、預金等を解約するときに、印鑑が必要な人が相続人です。
反対に、相続をされる方、つまり、亡くなった方を、「被相続人」(ひ そうぞくにん)といいます。
2 相続人の順位とは?
2-1 民法の定め
相続人の順位は、民法887条から890条にかけて、規定されています。誰が相続人になるかは、事例によって、何通りもありますので、基本となる条文から考えるのが適切です。まずは条文を紹介し、順番に解説します。
(子及びその代襲者等の相続権)
887条1 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条(欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条(欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
889条1 次に掲げる者は、第887条(子及びその代襲者等の相続権)の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
① 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
② 被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項(代襲者の相続権)の規定は、前項第2号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)
890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
2-2 配偶者相続人と血族相続人
相続人には、血のつながった相続人(血族相続人)と、配偶者相続人の2種類があります。
配偶者は、常に相続人の1人に含まれます(890条)。
一方、血族相続人には、順位があり、先順位の相続人が1人もいないときにはじめて、後順位の相続人に順位がまわってきます(889条1項)。
2-3 血族相続人の順位
第1順位
被相続人の子は、第1順位で相続人となります(887条1項)。
代襲とは?
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、その者の子(孫)が代わりに相続人となります(887条2項)。このように、尊属の代わりに相続人となることを「代襲する」と表現します。代襲して相続人となった人を代襲相続人といいます。
さらに、 孫も、相続の開始以前に死亡していたときは、その者の子(ひ孫)が、代襲して相続人となります(887条3項)。
親権の有無は無関係。前妻や前夫との間の子も相続人となる。
被相続人に離婚歴があり、前妻または前夫との間に子がいる場合、仮に被相続人が親権者ではない場合でも、「子」であることは変わらないため、その子は、相続人となります。このような事例では、現在の配偶者と前配偶者との子が、2分の1ずつ相続分を取得するため、とても協議しづらい状況となります。
離婚後に養育費などを支払い、面会も続けるなど、良好な関係を築いていれば良いですが、そうでないともめることが多いです。
結婚していない男女間の子も平等に権利がある。
「被相続人の子」であれば、相続人になります。
そのため、結婚していない男女間の子も相続人です。
養子に出ていても相続人となる。
普通養子縁組の場合、養子は実親と養親両方の子ですので、養子に出ていても法定相続人になります。
孫やひ孫がいれば、第1順位の相続人となる
なお、第1順位の「子」、もしくは、代襲相続人の「孫」や「ひ孫」が1人でもいるのであれば、その方が、相続人となるので、第2順位の直系尊属や第3順位の兄弟姉妹は相続人になれません。
第2順位
被相続人に、子、代襲相続人(孫)、再代襲相続人(ひ孫)がいないときは、直系尊属が相続人となります(889条1項①号)。
直系尊属とは、被相続人の両親や、祖父母、曾祖父母などを指します。両親の兄弟などは含みません。
注意すべきは、両親がいないときでも、祖父母や相曽父母まで相続権があるという点です。
直系尊属が複数人生きている場合には、より親等の近いものが、その人数によって、相続分を分散して取得します。
ex.被相続人の父親と祖父が生存している場合には、親等の近い父親だけが相続人となります(889条1項①号ただし書き)。
ex.両親が死亡しており、祖母だけが生存しているときは、祖母が相続人となります。
ex.両親が相続の放棄をしても、祖母が生存しているのであれば、祖母が相続人となります。
第3順位
第2順位となる直系尊属が誰もいないときは、最後に、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(889条1項②号)。
意外かもしれませんが、子や直系尊属がいない夫婦について、相続が発生すると、夫婦が長年連れ添っていた場合でも、「兄弟姉妹」がいれば、兄弟姉妹が配偶者と一緒に相続人となってしまいます。
夫婦が2人でずっと住んでいた家でも、兄弟姉妹がいれば、兄弟姉妹の法定相続分について共有となってしまいます。
妻が長年連れ添っており、夫の親族との付き合いが良好である場合には、兄弟姉妹が相続を放棄することも事実上多いです。しかし、法律の原則は、兄弟姉妹にも権利があります。
なお、被相続人の兄弟姉妹が相続の開始以前にすでに死亡していたときは、その者の子(甥、姪)が代襲して相続人となります(889条2項で887条2項を準用)。
一方で、甥、姪が相続の開始以前に死亡していたときは、その者の子(甥や姪の子)はさらに代襲して相続人になることはできません(889条2項が887条3項を準用していない)。代襲相続できるのは、甥、姪の世代までです。ここは、第1順位の相続人と異なるところです。
3 孫、甥、姪などの親族が相続人となる代襲相続とは?
3-1 代襲とは?
代襲とは、本来相続人となる者がすでに死亡している場合等に、その者に代わって、その子が相続人となることです。
例えば、第1順位の相続人として、長男と長女の2人いたけれど、長男が被相続人より先に亡くなっている場合、長男に子がいれば、長男の子と長女が一緒に相続人になります。
また、第3順位の相続人として兄妹が2人いたけれど、兄が被相続人より先に死亡しており、兄に子(甥っ子)がいれば、甥っ子が兄の代わりに、妹と一緒に相続人となります。
3-2 代襲と数次相続の違い
よく間違えやすいのが、代襲と数次相続の違いです。
数次相続(すうじそうぞく)とは、相続人が、被相続人の死亡後に亡くなった場合です。
代襲は、相続人が、被相続人の死亡以前に亡くなった場合です。
数次相続と、代襲相続は、死亡の順番が異なります。
また、代襲は回数の制限がありますが、数次相続には回数の制限がありません。
つまり、代襲(相続人が先に死亡していた場合)であれば、第1順位の相続の場合にはひ孫まで、第3順位の相続の場合には甥や姪まで、というおしりが決まっていますが、数次相続(相続人が順番に亡くなっていった場合)による相続人(判子を押す人)の広がりには終わりがなく無限です。そのため、何度か数次相続が起きれば、遺産分割協議書にサインをする人数が100人を超えることも夢ではありません。
3-3 代襲と数次相続の違いの具体例
親の相続で、こどもが長男と長女の2人いたとします。長男には子どもがいます。
長男が死亡する時期が
親より先であれば、それは代襲であり、長男の子が遺産分割に参加することで足ります。
親より後であれば、それは数次相続であり、長男の子だけではなく、長男の嫁も遺産分割に参加する必要があります。
4 相続する割合(相続分)と相続人の順位の違い
相続人の順位が決まったら、その相続人の中で、それぞれが遺産を取得する持分割合がきまります。
相続順位とは、だれが相続人なのかという問題で、相続分とは、相続人の中で何割ずつ相続するかという問題です。
たとえば、被相続人に第1順位の相続人である子がいるとき、相続人は第1順位の子と配偶者相続人だけで、第2順位の両親は、相続分がゼロなのではなく、そもそも相続人ではないのです。
5 行方不明の相続人がいるときの対応
法律上、相続人が誰なのか分かっていも、その人と連絡がとれなければ、手続を進めることができません。
そのような場合には、通常、弁護士が行方不明者の最後の住民票上の住所を探し、不動産会社や親族から情報を収集します。それでも、分からなければ、不在者財産管理人という制度を利用します。
不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって、代わりに、遺産分割の話合いに参加し、遺産分割協議書に署名をする専門家です(民法25条)。
6 相続人の1人が相続人不存在となっているときの対応
先ほど解説したように、数次相続(すうじそうぞく)とは、相続人が、被相続人の死亡後に亡くなった場合のように2つの相続が連続する場合のことです。この数次相続が起きたときに発生する問題として、相続人不存在があります。
たとえば、親の相続について放置している間に、相続人の1人である長男も死んでしまい、数次相続状態となりました。そして、実は長男には借金がたくさんあり、長男の相続人が全員、長男の相続の放棄をした場合、最初の親の相続は、誰が話し合うことになるでしょうか。話合いに参加するべき長男はすでに死亡しており、その長男の相続人もいない状態です。
この場合は、親の相続に関する長男の地位を承継する人が誰もいない状態、つまり、長男について相続人不存在となっており、手続としては、民法952条の相続財産管理人が、長男の代わりに、親の遺産分割協議に参加し、相続財産管理人が受け取った長男分の遺産は、長男の借金の返済に充てられ、残りの長男分の遺産があれば、国庫に引き継がれます。
悩ましいのは、こういった、手続を経ないと、遺産の解約や不動産の名義変更ができないことです。
7 遺産相続を専門家に依頼するのはどんな場合?
遺産相続で関わる専門家としては、税理士・弁護士・司法書士などが挙げられます。
この中で、相続人同士や第三者との交渉が必要な相続事件の解決は、弁護士が専門です。
そして、以下のようなケースでは、弁護士に依頼することで、相続問題を解決できる場合があります。
- 交通事故や労災事故で死亡したので損害賠償請求をしたい。
- 相続人と連絡がつかない
- 遺産として何があるかが分からない
- 遺言書や遺産分割協議書の内容に納得ができない
- 生前に多くの贈与がされており残った遺産だけでは平等ではない
- 不動産の分け方がきまらない
- 株式の分け方がきまらない
- 会社が保険料を払っていた生命保険があるけれど会社と話がすすまない
- 供養の費用でもめている
- 調停や裁判の代理をしてほしい
- 相続の放棄をしたい
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